韓国クラスター発生の梨泰院、BTSメンバーら芸能人も 感染者追跡の陰で性的マイノリティへの差別も
クラスター発生源はゲイクラブ
こうした芸能人のクラブ訪問の問題とは別に、今回のクラスター発生が注目を集めたのは、感染爆発を引き起こした感染者が訪れた先が「ゲイクラブ」だったことが影響しているようだ。
ドラマ『梨泰院クラス』で主人公が語っていたように梨泰院という街は「自由」な雰囲気を感じさせる。国籍やジェンダーの偏見を越えて受け入れてくれる街である。そのため、他の地域には観られないセクシャルマイノリティ専門のバーやクラブが多く集まっている。
今回クラスターが発生してしまったクラブKINGもそのうちの一つだったことから、韓国民のセクシャルマイノリティへの風当たりが強くなっている。
当初韓国内の一部メディアは、「ゲイバー」という部分を強調するかのように報道していたが、その後12日に「韓国ゲイ人権運動団体」が緊急記者会見を開き、このような表現を続けていると差別につながることを訴えると、各社記事を修正する動きがあった。また、5月17日は国際反ホモフォビア/反バイフォビア/反トランスフォビアの日だったのだが、毎年この時期に行われる各種セクシャルマイノリティ関連イベントも、今年は自粛することを発表した。
一方で、今まで徹底的な感染者の足取り公開徹底し、感染拡大を封じ込めてきた韓国だったが、今回はゲイバーであったことから、本人が名乗り出ずに検査も拒否しているケースも見られる。このことに関して、本人もゲイであり、梨泰院にいくつもお店を出しているタレントのホン・ソクチョンが、SNSを通じて「今勇気を出す時である。」「匿名保障でコロナの検査も可能なので、検査を受けて欲しい」と呼びかけている。
また、その数日後には、トランスジェンダータレントとして有名なハ・リスもSNSに「自分一人ぐらい...と考えずにみんなの為にも検査を受けてください」と訴える投稿をアップした。
行政までもがマイノリティを「魔女狩り」
しかし、このような呼びかけもむなしく、魔女狩りはすでに始まっているようだ。特に自治体が、人権をないがしろにしたかのような対応をしたのが問題になっている。折角感染拡大が収まりを見せた矢先のクラスター発生で、感染第2派となることを防ぐため、速く対応したいという考えが裏目に出たようだ。
仁川市は「仁川クイアー文化祭」の組織委員会の名簿を提出するよう要求するなど、プライバシーを無視した行為が波紋を広げた。
また、安養市は感染者の住所やアパート名まで公開。それにより第1感染者の会社員男性の家には「あなたのせいで学校再開が遅れ、子供たちが学校にいけなくなってしまった」という保護者有志による張り紙が貼られる事件が発生した。
魔女狩り行為は韓国芸能界にまで及んでいる。元々ゲイ疑惑のあった歌手のジョ・クォンは、この日クラブにいたのではないか?と疑われ、ジョ・クォンのSNSには多くの人が、クラスターの起こった日何をしていたか説明を求める書き込みをするようになった。ジョ・クォンはあきれながらも、「その日の夜は家で人気ドラマ"夫婦の世界"を観ていた」と声明を出す始末にまで発展している。