「収入減少者に毎月10万円給付を、検査能力向上が重要」 政府諮問委員・小林慶一郎インタビュー
政府の新型コロナ感染症に関する「基本的対処方針等諮問委員会」に今月12日、新たに加わった東京財団政策研究所・研究主幹の小林慶一郎氏(慶大客員教授)はロイターのインタビューに応じ、コロナ対策で収入減少に直面した個人に毎月10万円の現金給付を行うべきだと述べた。都内で14日撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)
政府の新型コロナ感染症に関する「基本的対処方針等諮問委員会」に今月12日、新たに加わった東京財団政策研究所・研究主幹の小林慶一郎氏(慶大客員教授)は15日、ロイターのインタビューに応じ、コロナ対策で収入減少に直面した個人に毎月10万円の現金給付を行うべきだと述べた。収入減少を申告した人を対象とし、給付総額は年間で最大24兆円程度になるとした。
また、新型コロナのワクチンや特効薬が開発され、世界規模で行き渡るには3─4年程度かかると予想。経済の停滞を避けるには、財政拡張政策を継続すると同時に、大規模な検査を実施できる能力を確立し、陽性者を隔離して陰性者の不安感を払しょくすることが不可欠であると指摘。検査と隔離の能力が大幅に向上すれば、経済のⅤ字回復も可能であるとの見解を示した。
こうした政策提言は、安倍晋三首相はじめ政権幹部に近く、伝える意向だと述べた。
月10万円給付、対象は1000ー2000万人
10万円給付の対象者は、コロナ危機による収入減少を申告した人とし、事前の審査はしないことが特徴。事後に「不正申告」が発覚した場合は、確定申告などで「上乗せ課税」して不正分を徴収するとしている。対象者は1000万人から2000万人になると想定。最大で24兆円程度の資金が必要になると説明した。
コロナ危機による経済への打撃が想定よりも強かった場合は、10万円給付を1年間だけでなく数年間に延長することも必要になると述べた。
財源は赤字国債の発行で賄い、その多くを日銀が購入すれば、国債暴落などの市場の混乱は起きないと予想。銀行などの民間金融機関もコロナ危機の継続下では、企業業績の不透明感の強まりなどでリスク回避傾向が続き、国債への選好度は高まり、その面からも日本国債の信用度は揺るがないとの見通しを示した。
他方、コロナ感染リスクへの警戒感は継続し、国境をまたぐ移動は活発化しない期間が長期化すると予想。世界的に空運関連の企業や航空機産業の市場は収縮が予想され、業界再編などの大きな動きが予想されると述べた。また、空運に限らず交通系企業の需要は当面、減少傾向が続くのではないかと語った。
世界的な経済の停滞が長期化する可能性が高まっており、企業は短期的な資金繰りだけでなく、資本の毀損に直面しかねないと指摘。資本の毀損が目立った企業に対しては、公的資金の注入が必要になるとの見解も示した。