最新記事

中国

トランプ「WHO拠出金停止」、習近平「高笑い」――アフターコロナの世界新秩序を狙う中国

2020年4月19日(日)17時53分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

もちろんトランプの対コロナ政策が正しかったとは言わない。間違っていたと思う。日本の安倍首相と同じく、コロナの災禍を甘く見ていて経済優先的な措置しか取らなかったことには責任がある。

トランプの場合、残念ながら、WHOへの拠出金を停止した時に何が起きるかという未来予測に関する危機感が甘いと言わざるを得ない。

国連のほとんどの専門機関を牛耳っている中国

現在、国連には15の専門組織(国連憲章第57条,第63条に基づき国連との間に連携協定を有し,国連と緊密な連携を保っている国際機関)があるが、その内の4つの専門機関の長は「中国人」が占めている。その4つの機関名と職位、中国人の名前および就任時期を書くと以下のようになる。

●UNIDO(国際連合工業開発機関)事務局長:李勇 (2013年6月~)

●ITU(国際電気通信連合)事務総局長:趙厚麟(2014年10月~)

●ICAO(国際民間航空機関)事務局長:柳芳(2015年3月~)

●FAO 国際連合食糧農業機関 事務局長:屈冬玉(2019年8月~)

習近平が中国共産党中央委員会(中共中央)総書記に着任したのが2012年11月で、国家主席の座に就いたのは「2013年3月」だ。なんと「みごと」ではないか。

親中の人間を国連や国連専門機関の長に据えるだけでなく、大陸の中国人そのものを国連専門機関の長に就かせることによって、中国は国連を乗っ取る戦略で動いているのである。

それだけではない。

国連専門機関のトップ以外の要職や、国連傘下の関連国際組織あるいはその周辺組織にも、以下のような中国人が着任している。

●WIPO(世界知的所有権機関)事務次長:王彬頴(2008年12月~)

●IMF(国際通貨基金)事務局長:林建海(2012年3月~2020年4月)

●WTO(世界貿易機関)事務局次長:易小準(2013年8月~)

●WB(世界銀行)常務副総裁兼最高総務責任者(CAO):楊少林(2016年1月~)

WHO(世界保健機関)事務局長補佐:任明輝(2016年1月~)

●AIIB(アジアインフラ投資銀行)行長(総裁):金立群(2016年1月~)

●IOC(国際オリンピック委員会)副会長;于再清(2016年8月~)

●IMF(国際通貨基金)副専務理事:張涛(2016年8月~)

●WMO(世界気象機関)事務次長:張文建(2016年9月~)

●UN(国際連合 国際連合経済社会局)事務次長:劉振民(2017年6月~)

●ADB(アジア開発銀行)副総裁:陳詩新(2018年12月~)

●UN(国際連合=国連 事務次長補佐):徐浩良(2019年9月~)

こんなに圧倒的な数の中国人が、国際組織の要職を占拠している。

これはチャイナ・マネーで買収された(という言葉が悪ければ「心を奪われた」)人々によって「選挙で公平に」選ばれているメンバーたちだ。戦略的な中国は、着々と水面下で「仕事」をしてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:ドバイ「黄金の街」、金価格高騰で宝飾品需

ワールド

アングル:ミャンマー特殊詐欺拠点、衛星通信利用で「

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 9
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中