最新記事

中国

トランプ「WHO拠出金停止」、習近平「高笑い」――アフターコロナの世界新秩序を狙う中国

2020年4月19日(日)17時53分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

新型コロナウイルス対策についての毎日の記者会見をするトランプ大統領(4月18日) Al Drago-REUTERS

コロナ蔓延の責任は習近平とWHOにあるのだからトランプがWHOを中国寄りと非難するのは正しい。しかし拠出金停止で喜ぶのは習近平だ。習近平がどれだけ用意周到に国連傘下の専門機関を牛耳ろうとしているかを知るべきである。

トランプ大統領がWHO拠出金停止を宣言

4月14日、トランプ大統領はWHOへの拠出金を停止すると表明した。公平であるべきWHOが「中国寄り」の立場を取ったせいで、新型コロナに関する適切な世界への警告を出さず、その結果全世界に感染を拡大させたいうのが理由だ。

WHOのテドロス事務局長は1月23日に緊急事態宣言発布を延期し、1月30日にようやく発布したが、WHO緊急事態宣言に付き物の「当該国への渡航や交易を禁止する」という条件を「その必要はない」として外し、緊急事態宣言を骨抜きにした。それが新型コロナを全世界に蔓延させる原因を作っている。これに関しては1月31日の<習近平とWHO事務局長の「仲」が人類に危機をもたらす>で詳述したし、またWHOによるパンデミック宣言時期の不適切さに関しては3月12日の<習近平の武漢入りとWHOのパンデミック宣言>に書いた通り。その意味においてトランプの主張は全面的に正しいと思っている。

テドロスが習近平になびき習近平寄りのメッセージを出したのは、言うまでもなく彼がエチオピア人で、エチオピアへの最大の投資国は中国だからだ。

さらにテドロスの辞任要求をカナダ在住の発起人がChange.orgというサイトで呼びかけ、4月15日で書名者の数は全世界で100万人を超えている。辞任要求として挙げているのは、「WHOは政治的に中立でなければならないのに、1月23日に時期尚早だとして緊急事態宣言を見送ったりなどして中国を擁護し、コロナ感染を世界に広げていった」ということである。

このいずれも客観的で正しい主張をしていると思う。コロナ災禍が収束したら、全世界は習近平とテドロスを徹底的に糾弾しなければならない。

だというのに日本の時事通信社などが「(トランプ大統領が)初動対応の遅れを批判される自身の責任転嫁のためにWHOを標的にした」]と報道しているのを見ると残念でならない。通信社は新しい情報を迅速に報道してくれるのでありがたいが、なぜ「責任転嫁のために」などと、主観的言葉を入れてニュース配信をするのだろうか。最初からトランプを悪者にして習近平やテドロスの罪を覆い隠している。これは中国の報道と全く同じで、まるで中国政府の代弁者のようだ。

同報道はさらに「トランプ政権は、新型ウイルス対策で医療用の高機能マスクなどの国外流出を阻止する方針を表明するなど自国最優先の姿勢を鮮明にしてきた」と誹謗しているが、アメリカの感染患者の尋常ではない爆発的増加に心を痛めないのだろうか?「自国最優先の姿勢」どころか、自国の国民の命を守るために少しでも多くの高機能マスクを自国の医者のために確保しようと思わなかったとしたら、一国家の指導者としても失格だろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中