欧州で強まる反中感情
Coronavirus Dispute Highlights Growing EU Skepticism Towards China
中国から送られたマスクの荷下ろしをするドイツ軍兵士(4月27日、ライプチヒ) Kim Hong-Ji-REUTERS
<新型コロナウイルス感染爆発の弱みにつけ込み、マスクや防護服を送ってくる中国を欧州主要国は警戒を強めている。インフラ建設の支援と見せかけて途上国を「債務の罠」に陥れたり、ユーロ危機でギリシャや中欧諸国に取り入った前科があるからだ>
EUは先週、中国が新型コロナウイルスに関する偽情報をソーシャルメディアで拡散した疑いがあるという報告書を発表したが、中国側はこれを即座に否定した。
中国は偽情報で被害を受けた側であり、流出元ではないと、中国外務省の耿爽(コン・ショアン)副報道局長は定例会見で述べた。
報道によれば、EUの報告書は中国の圧力で事前にかなりトーンダウンされたものだという。だがパンデミック(世界的大流行)震源地の責任追及を逃れようと欧州の感染拡大地域に対して「マスク外交」を展開する中国に、EUが警戒感を高めていることは明らかだ。
ヨーロッパでは今、偽情報の拡散など中国の悪質な行動に対する警戒感と、それを防ぐ対策を求める声が高まっていると、カーネギー国際平和財団の欧州プログラムを率いるエリク・ブラットバーグは本誌に語った。
「コロナ危機で中国に対する懐疑的な見方が強まりつつある。EUと中国の関係は緊張度を増しており、今後もギクシャクするだろう」
「脱中国」は不可能だが
コロナに対する初期対応の失敗をごまかそうとする中国の試みは裏目に出そうだ。欧米諸国は中国の公式の感染者数と死者数が少な過ぎるのではないかと疑問視しており、初期に警告を発した医師らの発言を封じたことなど、中国当局の透明性の欠如を非難している。一部の欧州諸国は、中国が医療支援として送ったマスクや検査キットが不良品だったとして返送した。
「今のところコロナ危機後の中国では、(情報隠しや言論統制など)好ましくない傾向が強まっているようだ」と、ブラットバーグは言う。
中国の統治システムが根本的に変わらない限り、「中国とEUの関係は今後ますますこじれるだろう」と、ブラッドバーグは見る。もちろん中国の統治システムが変わることは望み薄だ。
とはいえ、コロナ危機は公衆衛生上の危機だけでなく経済危機でもある。最も豊かな国々でさえ記憶にある限り最悪の景気後退に直面しており、経済の回復には貿易と国際協力が欠かせない。
中国の経済的な影響力は無視できない。欧米諸国は長年中国に依存してきたサプライチェーンを自国に取り戻したいだろうが、中国との関係を完全に断つことはまず不可能だ。