欧州で強まる反中感情
Coronavirus Dispute Highlights Growing EU Skepticism Towards China
だがEU首脳は概ね、ドナルド・トランプ米大統領やマイク・ポンペオ米国務長官のようなあからさまな反中国発言は控えてきた。トランプ政権はパンデミックの責任は中国にあると主張し、中国寄りだとして世界保健機関(WHO)も非難した。これに対し中国側は、アメリカは危機対応の不手際から国民の目をそらすために中国を悪玉に仕立てているとやり返している。
EUも中国の意図を警戒しているが、それに対する対処法ではトランプ政権と一線を画す。
だが外交では、EUも一枚岩ではない。中部ヨーロッパやバルカン諸国は習政権に友好的で、中国マネーの流入を歓迎している。ハンガリーやセルビアは、EUは頼りにならないとばかり、中国の医療支援に賛辞を惜しまない。
中国懐疑派が増える一方
コロナ不況に直撃されれば、中国マネーの誘惑はさらに抗しがたくなる。それでなくともEU首脳の中には中国の権威主義に親和的な政治家もいる。
中国の統治システムや中国当局の言動は、時として欧米の自由民主主義に反するとしても、中国とは経済関係だけでなく、国際秩序を維持するためにも協力関係を保ちたいと、多くのEU首脳は考えている。
世界が未曾有の経済危機に直面している今、手荒な「脱中国化」は取り返しのつかないダメージをもたらすだろう。その一方で、EUが懸念してきた中国の覇権主義や権威主義が、コロナ危機をきっかけに、ますます目に余るようになったことも否めない。
「このところヨーロッパでは親中派がめっきり減った」と、ブラットバーグは言う。「中国懐疑派が増える一方だ」
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