動揺する日本の医療現場 新型コロナウイルスと長期戦の備えに不安
受け入れ不備が生む問題
患者受け入れ体制の不備が原因となった問題も相次いでいる。ICUで働く上記の医師が説明した一つのケースでは、80代の新型コロナ患者が地元の病院での受け入れを繰り返し拒否され、350キロ以上離れた東京の病院に移送された。この男性患者には東京の病院でECMOや救命措置をとったがその後、自宅に戻ることはなく、東京で死亡したという。
「現場で受け入れ可能と判断しても、上に報告すると病院長から拒否されるケースもある」。同医師は病院側の複雑な内情に触れるとともに、新型コロナ感染症の患者を受け入れている病院の大半は赤字覚悟で治療に当たっていると述べた。
東京都によると、都内では3月に救急搬送された患者のうち、5つ以上の病院で受け入れを拒否されたり、20分以上受け入れ先が見つからなかったケースが931件と、昨年同月より約3割増えた。
医療機関への支援拡大が必要
医療関係者の懸念に対応して、厚生労働省は補正予算で医療機関への1490億円の交付金を創設、医師や看護師の派遣などにかかる費用も支援する。
同省は、新型コロナの重症患者をICUで受け入れた医療機関に対する診療報酬を2倍に引き上げる措置を発表しており、こうした対策が医療機関の支援に大きく寄与するとしている。
愛知県の大村秀章知事はロイターのインタビューで、国による医療機関の支援がさらに必要だと主張。同知事は今月、新型コロナ感染患者を受け入れた県内の医療機関に対し、最初の患者が出た1月に遡り、1人につき100万円ー400万円を交付する計画を発表している。
欧米や中国などと違い、日本には感染拡大防止のための厳格なロックダウン(都市封鎖)を強制したり、隔離方針に従わない企業や個人を罰する法的権限が当局にはない。政府は今月半ば、緊急事態宣言の対象を7都府県から全国に拡大したが、それでも大半の病院に患者受け入れを強制することはできない。
東京都新型コロナ感染症対策本部の担当者は、「われわれには(病院に患者受け入れを)強制する法的手段がないが、もしあったとしても、感染症対策ができていない病院に受け入れを要請すべきだとは思わない」と語った。
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