動揺する日本の医療現場 新型コロナウイルスと長期戦の備えに不安

「もうCOVID専用ICUです」と、聖路加国際病院の感染管理室でマネージャーとして働く坂本史衣さん(写真)は説明する。4月21日、東京都中央区で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
新型コロナウイルスの封じ込めが遅れる中で、日本の医療現場の歪みが表面化してきた。治療や看護に当たる医療従事者たちが物資や人手の不足で一段と厳しい状況に置かれる一方で、院内感染や経営リスクを理由に患者を拒まざるを得ない病院もあるなど、課題が山積している。
新型コロナとの長期戦をどう持続するのか。医師や看護スタッフらの使命感と自己犠牲に頼る現状に不安の声が広がりつつある。
ICUは「コロナ患者専用」
東京中央区にある聖路加国際病院では、集中医療室(ICU)にあるベッド8床のうち7床がCOVID−19(新型コロナウイルス感染症)の重症患者で常に埋まっている。すべてを使ってしまうと、急変した患者を入れることができないためだ。しかし、残る1床にも新型コロナ患者が救急搬送されてくる可能性は高い。
「もうCOVID専用ICUです」と、同病院の感染管理室でマネージャーとして働く坂本史衣さんは説明する。
日本国内の新型コロナの感染者は4月27日時点で1万3000人を超えた(横浜港のクルーズ船は除く)。聖路加国際病院は感染症指定医療機関となっており、最も重篤な患者が搬送される病院の一つだ。
感染と資金の二重リスク
しかし、感染の急拡大にもかかわらず、患者の受け入れが困難な病院も少なくない。感染症の治療に対応していない医療機関が新型コロナ患者を受け入れるには、専門的な医療人材の確保、院内感染対策の整備、通常行っている医療サービスの縮小や停止などが必要となり、経営的なリスクになりかねないからだ。
西日本のある大型病院のICUで働く医師は、匿名を条件に、民間病院は現時点では新型コロナの重症患者の受け入れを拒否することが可能で、実際に拒否している病院もある、と指摘。「今は民間どころか国立だって拒否している」と付け加えた。
多くの病院は、緊急対応ではなく、通常の手術や短期の入院で収入の多くを得ており、そうしたサービスを中止する余裕はないという。
院内感染のリスクも障害の一つだ。ロイターが国内の報道、医療機関の公開情報のほか、特定非営利活動法人(NPO)の医療ガバナンス研究所の調査内容を分析したところ、医療・介護施設で新型コロナに感染、あるいは勤務中や滞在中の検査で陽性反応が出た患者や医療関係者は1500人近くに達している。
日本集中治療医学会は、新型コロナによる重症呼吸不全により、ECMO(人口心肺装置)を使用している患者が4月12日時点で2週間で約2倍になったと発表している。
しかし、同医学会によると、日本の10万人当たりのICU病床数はドイツやイタリアなどを下回る。他の病床などを重症患者向けに転用することは可能だが、そうした治療に対応するスタッフを直ちに強化する必要があるという。
【関連記事】
・欠陥マスクとマスク不足と中国政府
・ベルギーの死亡率が世界一高いといわれる理由、ポルトガルが低い理由......
・東京都、新型コロナウイルス新規感染が112人確認 都内合計4000人を突破
・新型コロナウイルスをめぐる各国の最新状況まとめ(28日現在)