政府コロナ緊急経済対策への緊急提言「政府は損保に徹せよ」
損した人には30万円、個人事業主には100万円、と安倍首相は言うが(4月7日) Tomohiro Ohsumi/REUTERS
<安倍政権の緊急経済対策は不公平で本当に困った人が救われない>
政府は今日(4月6日)、与党に緊急経済対策案を提示した。残念ながら、経済学の素養のある人が作った案とは思われない。
現金給付について:政府は損保に徹せよ
政府がすべきことは、損害額である家計所得の損失を確定し、保険金を各個人に支払うことだ。ただ火災保険などと異なり、損害額の確定は、感染の終息を待たなくてはならないので、保険金の支払いまで政府が無担保のつなぎ融資をする。無担保といっても、予想される保険金額を融資の上限とすれば、融資の焦げ付きは小規模にとどまる。民間銀行でなく政府が融資をすれば、政府が保険金の支払いにコミットするというシグナルになる。
では損害額はいつ、どう確定するか。私の提案は、確定は来年の確定申告時、損害額は、2020年の申告所得から「ショックがなかったときの所得」を差し引いた額とする。保険金の支払いは、所得税の還付という形をとれば、迅速に行える。「ショックがなかったときの所得」は、2019年の所得について今年確定申告した個人については、2019年の所得とするが、上限と下限を設ける。申告しなかった個人については、たとえば2019年の申告所得の最頻値とする。
モラルハザードの懸念
政府が支払う保険金は、こうして確定した損害額の「一定割合」とする。コロナショックのせいで所得が減れば、納税額も減るのだから、「一定割合」を100%から限界税率を控除した値にすれば、税引後の所得は、ショックがない場合と変わらない。このように完全保障をするとモラルハザード発生の心配があるから、限界税率を控除した後さらに10%程度の控除をすべきだ。
なお、失業保険の充実を条件として、損害保険の対象は、給与所得を除いた事業所得に限ることも考えられる。
また、念のために付け加えると、保険金の支払いは、景気刺激のためではない。ショックのため底をついた貯蓄を補充するためだ。
政府の緊急経済対策では、早急に現金給付をするとしているが、問題点は二つある。一つは、各個人の月々の収入を政府が把握できないこと。自己申告に頼らざるを得ないが、虚偽の申告をする個人が続出するだろう。もう一つの問題点は、追加的な現金給付を約束されても、もらえる金額が不確定なので、特に事業者にとっては今後の不安は払拭されない。飲食店経営者に中には、貯蓄が底をつき、お店を開け続けなければ食べていけない人が多いと見聞する。私の提案のように、コロナ危機の間の損失の大部分が補填されるとわかっていれば、それが自粛要請を受け入れるインセンティブになる。飲食店の営業自粛がより徹底すれば、盛り場に繰り出す若者も少なくなる。