政府コロナ緊急経済対策への緊急提言「政府は損保に徹せよ」
いうまでもなく、企業は、規模の大小にかかわらず、個人が所有している。個人が補償されるのだから、企業への現金給付は、企業の所有者に重複して補償することになるので、不公平だ。資金繰りに困った企業に対して政府が何らかの融資をしてもよいが、担保をとり、焦げ付きによる納税者の負担は避けるべきだ。
財源は、所得税でなく消費税の特別増税
ショックの損失は、すべての国民が資力に応じて負担すべきだ(経済学によると、すべての国民について消費支出の減少率が同じになるように負担の分配をするのが効率的だ)。退職者、公務員などは、今回のコロナショックの金銭的被害者ではない。一番困っている方々は事業者だ。退職者を含めた国民に広く負担がシェアされるために、政府による保険金支払いの財源は、消費税率の少なくとも数年間にわたる引き上げだ。赤字国債を財源にするのは、将来の現役世代が負担することになり、効率性の原則に反する。
感染終息後の景気刺激策は不要
コロナショックは、マクロ経済学でいう供給ショックの一種だ。供給ショックによる不況に対しては、需要刺激策は限られた効果しかない。しかもこのショックは感染が終息すれば確実に消失する。商品券やクーポンを配らなくても、終息後はリベンジ消費で飲食店や行楽地に人々が殺到する。経済は放っておいてもV字回復する。
[執筆者]
林文夫 日本の経済学者。専門はマクロ経済学・計量経済学。ペンシルバニア大学教授、コロンビア大学教授、東京大学教授、一橋大学教授、政策研究大学院大学教授を歴任。