最新記事

医療崩壊

新型コロナ:ECMOの数より、扱える専門医が足りないという日本の現実

LAST DOCTOR STANDING

2020年4月18日(土)21時00分
小暮聡子(本誌記者)

新型コロナ患者にとって「最後のとりで」とされる人工肺 ECMO Akiromaru-iStock

<日本にはECMOを専門とする医師はかき集めても60人しかいない。新型インフルエンザでは、ECMOを使って治療した患者群の救命率は日本はイギリスの2分の1だった。日本におけるECMO治療の現状と限界とは。(4月21日発売の本誌4月28日号「日本に迫る 医療崩壊」特集より)>

新型コロナウイルス患者の「最後のとりで」とされるのが、ECMO(エクモ)と呼ばれる体外式膜型人工肺だ。
cover0428-01.jpg日本におけるECMO治療の実情について、栃木県・済生会宇都宮病院の救命救急センター長で、日本集中治療医学会「ECMOnet」の統括ECMOコーディネーターを務める小倉崇以(たかゆき)医師に聞いた(取材は4月14日)。

――ECMOとはそもそも、どういう状態の患者に何をする装置なのか。

呼吸のECMOと心臓のECMOの2種類がある。それぞれ、肺や心臓がだめになって全く使えなくなった人、動かなくなった人に導入する、生命維持装置だ。

――日本にECMOは何台あるのか。

集計の取り方によってまちまちだが、現在われわれ集中治療医学会ECMOnetが把握している数では、全国に約400台ある。

――400台というのは、コロナ患者以外に使うECMOも含んだ数か。

含んでいる。コロナ以外でECMOが使われると、コロナ患者に使用可能なECMOの台数は減っていく。

――ECMOを使える医療従事者は全国に何人いるのか。

これまでは、ECMOを専門としてやっていた人は30人ほどしかいなかった。今は全国で探してなんとかかき集めて、ECMOについて指導ができる程度には知っている、という人は約60人になっていると思う。

――ECMOを専門にする医師というのは、診療領域で言うと何の専門医なのか。

ICUドクターと言われる集中治療専門医と、救命救急センターで働く救命医だ。この点については基本的な認識が重要で、ECMOは人工心肺と言われるが、結局、呼吸器の専門家にも心臓の専門家にとっても扱いにくいものだ。

一般に、呼吸器内科や呼吸器外科、心臓血管外科や循環器内科の医師は、トレーニングを受けていなければ使いこなせない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中銀の独立性と信頼性維持は不可欠=IMFチーフエコ

ワールド

イスラエル、ガザ攻撃強化 封鎖でポリオ予防接種停止

ワールド

プーチン氏、民間インフラ攻撃停止提案検討の用意=大

ビジネス

米景気後退の確率45%近辺、FRBへの圧力で長期影
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「利下げ」は悪手で逆効果
  • 4
    日本の人口減少「衝撃の実態」...データは何を語る?
  • 5
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 6
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 7
    なぜ世界中の人が「日本アニメ」にハマるのか?...鬼…
  • 8
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 9
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 10
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 7
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中