新型コロナウイルス死者急増のインドネシア 厳重梱包での死後4時間以内の埋葬を義務化
警察が葬儀支援と周辺警戒警備
ただ、火葬がほとんどの日本と異なるのは、墓地周辺の住民による反対運動である。ジャカルタ市内の2か所の指定墓地周辺の住民は「コロナ感染者の埋葬は土葬ということもあり、墓地周辺へのコロナウイルスの感染拡大の可能性が完全には否定できない」として感染者あるいは感染の疑いのある死者の埋葬に強く反対を唱え、霊柩車の到着や埋葬作業の妨害をするケースも報告される事態となっている。
こうした状況を重視したジャカルタ首都圏警察では4月6日から2カ所の指定墓地に警察官による特別チームの派遣を決めた。各墓地にそれぞれ約30人の警察官を配置して、うち4人が防護服などを着用した完全防備態勢で埋葬作業員の支援に当たるほか、残る26人が墓地周辺での反対住民らによる搬入・埋葬作業への妨害行為の取締りや、立ち会う家族の警備に当たることになった。
ジャカルタ州当局によるとこれまでにジャカルタ市内でガイドラインの手順に従って埋葬した死者は639人に達しているというが、このうち検査で陽性と判定されたコロナウイルス感染者は126人に留まっている。
つまり残る513人の死者は、「感染が濃厚ではあるが確定していない」ケースであり、保健省が毎日発表している感染死者数の統計には含まれていない「隠れ感染死者」の可能性が高い数字という。
コロナウイルスの感染拡大という非常事態だけに死者との別れを含めて葬儀、埋葬の様相が一変し、残された遺族や知人は戸惑いを隠せないようだ。警察による警戒警備の中、あわただしく離れた場所から死者を見送る家族の様子が連日新聞やテレビで伝えられている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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