最新記事

感染症

新型コロナウイルス死者急増のインドネシア 厳重梱包での死後4時間以内の埋葬を義務化

2020年4月9日(木)19時22分
大塚智彦(PanAsiaNews)

新型コロナウイルスで亡くなった者は厳重に梱包されたうえで死後4時間位内に埋葬される。 REUTERS/Willy Kurniawan

<パンデミックが引き起こすもう一つの悲劇、それは亡くなった人と満足な別れができないことだ>

新型コロナウイルスの感染者と死者が留まるところを知らずに増加の一途をたどっているインドネシアで感染による死者の葬儀、埋葬が「さらなる感染の拡大につながる」として緊急対応を迫られる事態になっている。

インドネシア国内で最も感染者数が多い首都のジャカルタでは州政府によって「感染者埋葬に関するガイドライン」が策定され、コロナウイルスによる死者はこのガイドラインに沿った葬儀、埋葬が義務付けられることになっている。

人口が世界第4位のインドネシアは、約2億6000万人の国民の約88%をイスラム教徒が占める。イスラム教徒が死亡した場合、教義により死後24時間以内に洗体して白い布で包んだだけの状態で遺体を土葬することになっている。

この24時間以内の埋葬のため、平時でも家族や親族・友人が遠隔地や海外にいると葬儀に間に合わないケースがよくあるという。

今回ジャカルタ州政府が打ち出したガイドラインは土葬のイスラム教徒あるいはキリスト教徒に限らず、一部で火葬を行う仏教徒なども含め全ての宗教に関わらず適用されることになっている。

感染・感染濃厚死者は死後4時間で埋葬

ジャカルタ市内のコロナ感染患者の治療、入院が指定されている特定病院で死亡した感染者あるいは陽性が確定していないものの感染している可能性のある死者は全て死後4時間以内の埋葬が義務付けられることになった。

患者が死亡すると病院内の完全に隔離された部屋で空気、水分を完全にシャットアウトするプラスチックで遺体を厳重に密封。その上からイスラム教徒の場合は教義に従った白い布(カファン)で包み、再度プラスチックで密封したうえ、さらに遺体袋に収めてから柩に安置する。そしてその柩を同じプラスチックで再度密封し、消毒液を散布してから搬出、霊柩車で墓地に運ぶようにガイドラインは求めている。

ジャカルタ州内では東ジャカルタのポンドック・ランゴン墓地、西ジャカルタのトゥガル・アルール墓地の2カ所の公共墓地が感染者あるいは感染の疑いのある死者の埋葬指定墓地となっている。

墓地で埋葬作業にあたる作業員にはマスク、手袋に加えて防護服の着用が義務付けられ、作業終了後には消毒液の噴霧を受け、さらに使用したマスク、手袋、防護服はその場ですぐに焼却処分にするという徹底ぶりだ。

死後4時間での埋葬となるため通常の葬儀は執り行うことが実質的に不可能になり、家族や親戚・友人らは墓地での埋葬を離れた場所からマスク着用のうえ見守ることが許されるという状況だ。

これはコロナ関連の死者と最後の別れを惜しむこともできない日本を含めた感染が拡大している諸外国と同じ状況である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、日本人の短期ビザ免除を再開 林官房長官「交流

ビジネス

独GDP改定値、第3四半期は前期比+0.1% 速報

ビジネス

独総合PMI、11月は2月以来の低水準 サービスが

ビジネス

仏総合PMI、11月は44.8に低下 新規受注が大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中