新型コロナウイルスで明暗別れる日本の外食業 客層や立地が客足に影響
日本の外食産業は新型コロナウイルスの影響を総じて受けているものの、業態や客層、立地などによってその濃淡が異なる。写真は3月9日、東京で撮影(2020年 ロイター/Hannibal Hanschke)
外食産業で明暗が分かれている。新型コロナウイルスの影響を総じて受けているものの、業態や客層、立地などによってその濃淡が異なるためだ。接待や宴会需要の高いパブ・居酒屋の売り上げが落ち込む一方、食堂、レストラン、専門店などは底堅い。大人数より小人数、繁華街より郊外の業態の方が相対的に賑わいをみせている。
寂しい繁華街
「本当はきょう貸し切り営業だったんですけどね」。3月中旬のアフター5。東京・赤坂駅から徒歩5分の居酒屋には、カウンターに個人客が1人。いつもと違う風景が広がっていた。
地酒が売りのこの店は、19時過ぎには会社帰りのビジネスパーソンでテーブル・カウンター全25席が埋まることが多かった。ただ、安倍晋三首相が先月26日、イベントの自粛を要請したところから風向きが変わり、3月2日以降に入っていた予約は個人、宴会を含めてすべてキャンセル。9日以降も予約の申し込みがまったく無くなったという。
例年、3月は企業の送迎会などがあって忙しい時期だが、新型コロナの影響で自粛ムードが広がり機会損失となっている。「歓迎会は延期できますが、送迎会は人が別の場所に行ったきりになったりしますからね。送迎会のやり直しは見込めません」。居酒屋の店主は話す。
レストラン予約管理システムなどを手掛けるテーブルチェック(東京都中央区)がまとめたデータによると、団体予約のキャンセル率が、26日以降、6名予約が1月初旬に比べて約1.5倍、10名以上が約3.6倍まで急上昇したという。
赤坂や新橋などの飲食店の事情に詳しい、港区内の酒店店員によると、接待や宴会の自粛が飲食店の経営を圧迫。夜間営業のみの店がランチを始めたり、複数店を経営しているところは営業店舗を減らしたりして「糊口を凌いでいる」という。中には4月以降の営業の継続を諦め、店舗の賃貸契約を解約したところもあるという。
郊外は別の光景
賑わいをみせている店もある。
別の3月後半の平日夜。東京・板橋区の住宅街の一角にある居酒屋は、ほぼ満席状態だった。企業や団体ではなく、常連やファミリー層が顧客の中心だったこともあり、新型コロナ流行による自粛の影響を免れた形だ。「客足はほとんど落ちていない」(店主)といい、男性客の一人は「会社での飲み会はほとんどなくなった。最近は一人でサッと飲んで帰ることが多くなった」と話す。
その日の深夜。同じ板橋区の幹線道路沿いにある立ち食い蕎麦屋には、途切れることなく客が舞い込んでいた。午前0時を過ぎているにもかかわらず、カウンターはほぼ満席。客は平均10分程度で食べ終え、徒歩や自転車で帰っていく。客足について、ここもまた「おかげさまで新型コロナの感染が拡大してからもあまり変化はない」と店員は話す。