背後に千億円の対中コロナ支援:中露首脳電話会談
報道によれば3月19日に開催された新開発銀行取締役会で、湖北省、広東省や河南省における疾病との闘いに関する数々の緊急支出(緊急的設備、緊急医療物資購入および病院や病室、実験室建設など)を支援するため、中国に対して70億人民元(1人民元=15.64 円、3月21日現在)(約1,094.8億円)の緊急援助を融資すると承認したとのこと。融資期間は30年で低コスト、迅速な支払いなどが保障されている。これは新開発銀行が加盟国の疫病との戦いを支援する最初の緊急援助融資であり、国際金融機関としても初めての融資で、最大額の国家向け融資(Sovereign loans)だとのことである。
ムニューシンがIMFや世銀に一帯一路への融資を阻止
中国政府の報道にわざわざ「国際金融機関としても初めての融資」と書いてあるが、これには訳がある。
というのも、アメリカのムニューシン(Mnuchin)財務長官が3月11日、「一帯一路」参加国への融資について、IMF(国際通貨基金)や世界銀行に対し、「両機関からの資金が中国への返済のために使われないようにせよ」と言ったからだ。アメリカは両機関と緊密な連携を取っているとニューヨークタイムズなどがロイター電として"Mnuchin Says IMF and World Bank Funds Won't Repay Debts to China"と伝えている。
報道によれば、ムニューシンは"We think this is critically important."(これは非常に重要なことだ)と米下院歳出委員会の公聴会で述べたとのこと。
実際、「一帯一路」で過剰な債務を負ったパキスタンなどは、IMFに金融支援を要請し、IMFは昨年7月、パキスタンに3年間で60億ドルの融資を実行することを承認している。中国により債務漬けにされ、中国があくどいやり方でぼろ儲けをしているというのに、その尻拭いをIMFがやったのでは、中国に有利になるばかり。こんなことをしてはならないと警鐘を鳴らしているわけだ。
中国外交部の耿爽報道官は3月12日、ムニューシンの発言について、「国際金融機関は政治の道具ではない」と批判し、「国際金融機関は一帯一路構想を高く評価している」と反論した。
この「国際金融機関」という言葉が「フック」のように絡んでいるのである。
それを読み解かないと、中国政治読み解きの醍醐味は出てこない。
CCTVに頻繁に顔を出すIMF専務理事クリスタリナ・ゲオルギエバ氏
新型コロナ肺炎発症以降、中国共産党が管轄する中央テレビ局CCTVに頻繁に顔を出すのはIMFのクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事だ。彼女は2019年10月1日からクリスティーヌ・ラガルド元専務理事の後任としてIMF専務理事に就任したが、注目しなければならないのは、彼女がブルガリア人だということである。