最新記事

新型コロナウイルス

イタリアを感染拡大の「震源地」にした懲りない個人主義

Virus Spread by la Dolce Vita

2020年3月19日(木)15時30分
イザベラ・ディオニシオ(在日イタリア人翻訳家・翻訳コーディネーター)

移動制限措置を受けて店を閉めるレストラン(3月11日、ローマ) REMO CASILLI-REUTERS

<中国に次ぐ大量の感染者増を招いたのは、検査のし過ぎと楽天的な国民性、そして緊縮政策>

猛威を振るい続けているCOVID-19(2019年型コロナウイルス感染症)だが、とうとうイタリアはイラン、韓国を抜いて、中国に次ぐ感染拡大国となってしまった。感染者数が最も多いイタリア北部に限定されていた移動制限措置は、3月10日から全土に拡大された。仕事や家族の緊急事態の移動のみが認められ、その場合も内務省規定の自己申告書の所持が義務付けられている。

状況は日々変化しているが、基本的に商業施設は入店を制限し、イベント・集会は全面禁止。あっという間に広まった未知のウイルスを食い止めるには、抜本的な対策を講じる必要があった。

ミラノを含む、いわゆる「レッドゾーン」の封鎖計画に関する噂は、7日の夜からじわじわと広がり始めた。それが大混乱の引き金となった。

わが身ひとつで駅に駆け込んだ人、家族を車に乗せて旅立った人、近場のスキー場で癒やしを求めたのんきな人......。その夜のうちに、数千人が脱出を試みた。ウイルスのキャリアである可能性を秘めている彼らは、イタリアの先々にそれをまき散らすことになるとは考えもしなかった。「自分は大丈夫だから」

しかし病院は崩壊寸前だ。疲れ切った医師や看護師は休みなしに職務に励んでいるが、集中治療室と人工呼吸器の数が不足し、コロナウイルス以外の重症患者の治療までが危うい状態に陥っている。その一方、患者第1号の街として注目を浴びたミラノ近郊のコドーニョでは、11日、つまり隔離から18日目に、初めて新感染者0人という喜ばしい発表があった。

医療費を削減したツケ

一刻を争う危機的状況であることは一目瞭然だが、ウイルスの発生地から8000キロも離れているイタリアが、なぜこのような窮地に立たされているのか。

感染が急速に広まった理由の1つは、院内感染を増やしてしまう危険性を考慮せずに、数多くの検査が行われたこと。それによって、どの病院も満杯となり、たちまちウイルスのたまり場と化した。

それに加えて、楽天的で個人主義志向が強いイタリア人特有の性格も災いした。大急ぎでミラノから脱出した人たちも、いったんレッドゾーンを出ると、恐怖を実感するまではいつもどおり遊びに精を出し、政府の警告を無視し続けたからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-黒海安保、トルコで15─16日に4カ国会合 

ワールド

自動車業界、米関税やEU規制でリスクに直面=ステラ

ワールド

中国、輸出入企業に市場の多様化呼びかけ 米関税に対

ビジネス

米BofA、第1四半期は増益 トレーディングと金利
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ印がある」説が話題...「インディゴチルドレン?」
  • 4
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 5
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 7
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    そんなにむしって大丈夫? 昼寝中の猫から毛を「引…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中