イタリアを感染拡大の「震源地」にした懲りない個人主義
Virus Spread by la Dolce Vita
移動制限措置を受けて店を閉めるレストラン(3月11日、ローマ) REMO CASILLI-REUTERS
<中国に次ぐ大量の感染者増を招いたのは、検査のし過ぎと楽天的な国民性、そして緊縮政策>
猛威を振るい続けているCOVID-19(2019年型コロナウイルス感染症)だが、とうとうイタリアはイラン、韓国を抜いて、中国に次ぐ感染拡大国となってしまった。感染者数が最も多いイタリア北部に限定されていた移動制限措置は、3月10日から全土に拡大された。仕事や家族の緊急事態の移動のみが認められ、その場合も内務省規定の自己申告書の所持が義務付けられている。
状況は日々変化しているが、基本的に商業施設は入店を制限し、イベント・集会は全面禁止。あっという間に広まった未知のウイルスを食い止めるには、抜本的な対策を講じる必要があった。
ミラノを含む、いわゆる「レッドゾーン」の封鎖計画に関する噂は、7日の夜からじわじわと広がり始めた。それが大混乱の引き金となった。
わが身ひとつで駅に駆け込んだ人、家族を車に乗せて旅立った人、近場のスキー場で癒やしを求めたのんきな人......。その夜のうちに、数千人が脱出を試みた。ウイルスのキャリアである可能性を秘めている彼らは、イタリアの先々にそれをまき散らすことになるとは考えもしなかった。「自分は大丈夫だから」
しかし病院は崩壊寸前だ。疲れ切った医師や看護師は休みなしに職務に励んでいるが、集中治療室と人工呼吸器の数が不足し、コロナウイルス以外の重症患者の治療までが危うい状態に陥っている。その一方、患者第1号の街として注目を浴びたミラノ近郊のコドーニョでは、11日、つまり隔離から18日目に、初めて新感染者0人という喜ばしい発表があった。
医療費を削減したツケ
一刻を争う危機的状況であることは一目瞭然だが、ウイルスの発生地から8000キロも離れているイタリアが、なぜこのような窮地に立たされているのか。
感染が急速に広まった理由の1つは、院内感染を増やしてしまう危険性を考慮せずに、数多くの検査が行われたこと。それによって、どの病院も満杯となり、たちまちウイルスのたまり場と化した。
それに加えて、楽天的で個人主義志向が強いイタリア人特有の性格も災いした。大急ぎでミラノから脱出した人たちも、いったんレッドゾーンを出ると、恐怖を実感するまではいつもどおり遊びに精を出し、政府の警告を無視し続けたからだ。