イタリアが「欧州の武漢」に なぜ感染は急速に広がったのか
11カ所、50万人が隔離、外部と遮断
2月23日に始まった封鎖措置はロンバルディア州で10カ所、ベネト州で1カ所の街を対象としており、約5万人の住民が外の世界と隔絶されている。最低限の必需品を積んだトラックは出入り可能だが、警察が設置した障害物により、それ以外の人々は閉じ込められている。
イタリアの事例は、西側諸国の経済が予想外の外的事象に対していかに脆弱かを示している。封鎖された「レッドゾーン」とその周辺地域は、イタリア経済の縮図である。この地域では、企業の倉庫や物流センターから、チーズ・酪農加工センターに至るまで、あらゆる事業活動が見られる。
地元のエンジニアリング産業労働組合によれば、主として「レッドゾーン」で生活する約6000人の製造業労働者が自宅待機もしくは短縮勤務になっているという。
FIM-CISL労組の地元支部で事務局長を務めるアンドレア・ドネガ氏は、「非常に憂慮している。雇用への影響について信頼性の高い推計が得られるには数カ月かかるだろう。だが、当面の兆候は警戒を要する」と話す。
銀行は、住民による現金の引き出しを確保する措置をとっている。この地域の主要銀行のひとつ、バンコBPMは、他銀行の顧客が同行ATMを利用する場合、暫定的に手数料を徴収しないことにした。
ウイルスの感染がほとんど及んでいない地域にも影響が生じつつある。イタリアの観光業連盟であるアッソツーリズモによれば、3月のホテル・旅行代理店の予約キャンセルは、ローマで最大90%、シチリアで最大80%に達するという。学校の旅行や国内での会議が中止され、外国人観光客も慎重になっているためだ。
「近年、イタリアの観光業がこれほどの規模の危機に瀕したことは一度もない。最悪の時期を迎えている。9.11のときでさえ、これほどの打撃はなかった」と語るのは、アッソツーリズモを率いるビットリオ・メッシーナ氏。