最新記事

社会格差

虫歯がある子どもの比率に地域差があるのは、治療費のせいではない

2020年3月4日(水)15時45分
舞田敏彦(教育社会学者)

虫歯のある子どもの比率は現在、2割程度にまで下がってきているが Nastasic/iStock. 

<今は東京23区の子どもの医療費は無償になっているが、それでも虫歯と貧困率には相関関係が見られる>

子どもと虫歯は、切っても切れない間柄だ。子どもの頃、歯医者で「キュイーン」というあの忌まわしい音を聞いたことがない人は少ないだろう。

統計で見ると、虫歯のある子どもの比率は下がってきている。戦後の推移を見ると、ピークの1967年では、健診で未処置の虫歯が見つかった小学生の比率は82.2%にも達していた(文科省『学校保健統計』)。外来の菓子類が出回る一方、虫歯予防の意識が今ほど高くなかったためだろう。当時は歯医者の数も少なかった。

その後、虫歯のある子どもの比率は低下傾向となり、筆者が10歳だった1986年は58.4%、2019年現在では21.7%まで下がっている。ピーク時の4分の1だ。各種の啓発により、オーラルケアに対する保護者の意識が高まっているためだ。虫歯予防のため、フッ素液でうがいをさせる学校も増えている。

このように状況は改善されているが、どういう子が虫歯になりやすいかを可視化すると問題も見えてくる。学校で歯科検診をしている歯科医から「学校や地域によって、虫歯が見つかる子どもの比率が大きく異なる」という声が聞かれるが、虫歯の子どもの比率には地域差がある。<図1>は、都内23区の小学生の虫歯児の比率を地図に落としたものだ。1~5位に濃い色、6~10位に薄い色をつけている。

data200304-chart01.jpg

最高は葛飾区で20.3%、最低は千代田区で11.0%と2倍近くの開きがある。同じ23区内でも、虫歯のある子どもの比率はエリアによってかなり違う。地域性もあるようで、比率が高い区は城東エリアに固まっている。副都心のある新宿区も相対的に高いが、外国人の住民が多いためかもしれない。それに対して、中心部や西部では虫歯のある子どもは少ない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は3日ぶり反落、円高など嫌気 売買代金は今

ワールド

北京の米国料理店、豪州産牛肉に切り替えへ 貿易戦争

ビジネス

3月コンビニ既存店売上高は前年比2.7%増、2カ月

ビジネス

中国から米ボーイング機返送、2機目がグアム着=飛行
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボランティアが、職員たちにもたらした「学び」
  • 3
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投稿した写真が「嫌な予感しかしない」と話題
  • 4
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 5
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 6
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 9
    遺物「青いコーラン」から未解明の文字を発見...ペー…
  • 10
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 9
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中