最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナウイルス感染拡大がもたらす株価暴落と世界封鎖

Get Ready for Closed Borders and Crashing Markets

2020年2月25日(火)19時15分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌シニアエディター)

中国の景気悪化は、春節(旧正月)の間にウイルス感染が拡大して、大勢の人が郷里に帰ったまま職場に戻れなくなったことでさらに深刻化した。各企業の事業所や工場は今後もまだ閉鎖状態が続く可能性が高い。人員不足は大手企業のサービスにも及んでいる。

中国以外の国でもこうした事態が待ち受けている可能性がある。それが民主主義国であれば、中国のような専制的な封鎖や移動制限には頼らないかもしれない。たとえば韓国南部の大邱市は教会で集団感染が発生したため「特別管理地域」に指定され、防疫態勢が強化されているが、規則の順守は任意だ(おおむね順守されている)。イタリアで新たに設けられた「立ち入り禁止区域」は、韓国よりは規則が厳しいものの、規模や厳密さでは及ばない。インドのように市民生活に対する各種規制が常態化している国でさえ、中国のような強硬措置を取ることはできないかもしれない。

だが海外渡航に関しては大胆な措置が取られており、各国の航空会社は中国路線の運休や減便を行っている。大部分の専門家は、渡航制限にウイルス拡散防止の効果はないという意見で一致しているものの、感染がさらに拡大すれば、今後数週間か数カ月にわたって、海外への渡航がさらに難しくなることが予想される。世界各地から人が集まるイベントも延期や中止が増える可能性が高い。既に複数の国際会議が中止になっている。

2.買い占め

中国国内では、当初懸念されていたほど物資不足は深刻ではない。配達員たちの英雄的な仕事のお陰もあり、感染拡大が最も深刻な地域でも食品や水が手に入る状況だ。だが香港では、中国本土に比べて感染者が少ないにもかかわらず、多くの店舗で商品棚が空になっている。消費者がトイレットペーパーなどの日用品を買い占めているためだ。イタリアでも、大勢の人々がスーパーマーケットに押し寄せている。世界的にも、マスクなどの医療物資が供給不足の状態だ。

感染拡大への不安が広がるにつれて、買い占めが頻発するようになるだろう。特に香港やイタリアのように、政府の対応能力に対する国民の信用が乏しい地域ではその傾向が強くなる。香港では当局が中国政府の言いなりと見られており、今も反政府デモが続いている。イタリアでは無能な官僚への不信感が根強く、特に災害発生時の対応の信用は低い。通商路に支障が出れば、直ちに物資が不足して買い占めがさらに激しくなる可能性が高い。

3.人種差別と分断

コロナウイルス発生当初、感染がまだ中国国内に限られていたころから、世界にアジア人差別が広まった。中国のパスポート所持者に対する見境のない差別や、暴言や脅しもあった。中国国内でも、新型コロナウイルスの発生源となった湖北省の人たちが迫害されている。アジア諸国では華僑がターゲットになり、欧米では、国籍がどこだろうとアジア人に見える人はいつ標的になるもわからない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

メキシコ大統領、強制送還移民受け入れの用意 トラン

ビジネス

Temuの中国PDD、第3四半期は売上高と利益が予

ビジネス

10月全国消費者物価(除く生鮮)は前年比+2.3%

ワールド

ノルウェーGDP、第3四半期は前期比+0.5% 予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中