新型コロナウイルス感染拡大がもたらす株価暴落と世界封鎖
Get Ready for Closed Borders and Crashing Markets
自然災害はときに、人々を結束させてきた。1999年にトルコ北西部で地震が発生したときは、対立していた隣国ギリシャと助け合い、それがきっかけで外交関係も好転した。WHOなどの疾病対策機関は、国際協力の希望の星だった。
しかし、新型コロナウイルスではなぜか協力関係がほとんど見られず、代わりに陰謀説がもてはやされている。中国、あるいはアメリカの陰謀という説だ。中国政府はアメリカからの支援の申し出を断り、国粋主義的な反米レトリックを強化している。中国のメッセージアプリ「WeChat(微信)」では、新型ウイルスはアメリカから来たという陰謀説が、検閲後も削除されずに残っている。2月半ばに、攻撃的な国家主義者として知られる趙立堅が、中国外務省の副報道局長に就任したのも不気味だ。
感染がさらに広がれば、世界各国の中国に対する姿勢も厳しさを増すだろう。中国重視の姿勢を見せてきたカンボジアのフン・セン首相やパキスタンのイムラン・カーン首相にとっては、新型コロナウイルス流行は、中国政府に取り入るチャンスだ。独裁を目指す国家なら、中国の強権的で「効率的」なやり方に学ぼうとするのも無理はない。だが中国の台頭を懸念する人に言わせれば、新型ウイルス発生当初に中国政府が行った隠ぺい行為だけでも、世界的流行の責任をなすりつけるのに十分だ。
4.システム的な故障
これらすべてが、相互に事態を悪化させる。国や都市を封鎖すれば恐怖を煽る。恐怖は市場を歪ませ、生産性を破壊する。分断は国際協力を不可能にし、渡航制限を招く。最も危険なシナリオは、ウイルスの影響が巡り巡ってシステム全体を崩壊させるシナリオだ。
世界は、そのシナリオがどのようなものかを武漢ですでに目にしている。ウイルスによって、かねてから脆弱だった医療システムは完全に機能が停止してしまった。その結果、人数は不明だが、死ぬ必要のなかった死者が出た。彼らが命を落としたのはウイルスのためではなく、治療のための十分なベッドや機器、救急車が足りなかったからだ。
中国は、一人当たりで見ればまだ貧しくても、国としては膨大な富と人的資源を有している。インドやインドネシアなどの国々は、巨大な人口を抱えていても資源はかなり少なく、より厳しい状況に陥るかもしれない。医療から銀行にいたる日常的なサービスが機能停止になれば、その波及効果は壊滅的なものとなるだろう。
そうした事態はどれも、防げないものではない。人間は危機的状況に直面すると、非常に粘り強くなって順応性を発揮し、協力的になる。もしかすると、ワクチンが予想より早く完成するかもしれない。夏が来れば、ウイルスの拡散スピードが弱まる可能性もある。
ウイルスとの戦いでは、検疫や規制より、一般の人々に対する教育のほうがはるかに大きな威力を発揮する。世界のリーダーたちが立ち上がり、このリスクに真剣に取り組めば、の話だが。