最新記事

追悼

コービーはジョーダンに並ぶ「神」だった

A Tribute to the Black Mamba

2020年1月31日(金)17時00分
芹澤渉(共同通信ロサンゼルス支局記者)

ロサンゼルス・レイカーズ一筋だったコービーの訃報は、ロスを悲しみで包んだ(写真は現役時代のコービー、2009年) Jed Jacobson/Pool/REUTERS

<NBAの元スーパースター、コービー・ブライアントの訃報に接して、コービーを素直に愛せなかった筆者がロサンゼルスで思い知った、コービーがこれほどまでに愛された訳>

飛行機が到着し、機内モードを切ると、携帯電話には異例の数のメッセージがたまっていた。米国駐在のスポーツ記者という職業柄、考えられるのは突発的なニュースのやり取りだ。大物選手の移籍でもあったか? 1月26日、仮眠を終え、まだぼんやりとした頭に飛び込んできたのは想像を遥かに超える知らせだった。

「コービー・ブライアントがヘリコプターの墜落事故で死亡した」。メッセージに貼られたリンク先やツイッターには、速報記事や関係者の反応などがあふれていた。現実感が全く湧かない。

出張先からの乗り継ぎのために降りたアリゾナ州フェニックスの空港を歩いていても、地に足がつかない。わずか1時間ちょっとのフライトの間に世界がひっくり返ったようだった。

正直に言う。コービーは特別思い入れのある選手ではなかった。彼より2歳年下で、小学校時代をアメリカで過ごした私にとって「神」はマイケル・ジョーダンだった。

うまい選手、強い選手は他にもいたが、クラシック音楽でも似合いそうな優美さと、獲物を狙う肉食獣のような勝利への執念を兼ね備えた選手は唯一無二だった。コービーが現れるまでは。

1996年にロサンゼルス・レイカーズでデビューした新星は、ジョーダンと入れ替わるようにスター街道をのし上がった。97~98年シーズンにシカゴ・ブルズがNBA3連覇を達成すると、大黒柱のジョーダンは2度目の現役引退を宣言した。すると今度はレイカーズが99~00年から3連覇。原動力はコービーだった。

2人は同じ198センチで、得点能力も身のこなしも、試合終盤の勝負強さもそっくりだった。ジョーダン伝説の余韻に浸ることを拒む次世代スターの登場は、驚異であり脅威だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦が発効、人質名簿巡る混乱で遅延 15カ月に

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中