ミャンマー、終わらぬロヒンギャ難民危機 積極支援する中国の野心とは
見通せないミャンマーへの帰還
2017年に73万人以上がバングラデシュへ逃れたロヒンギャだが、ミャンマーには今も数十万人が残る。彼らはキャンプや村落から出られず、医療や教育サービスを受けられずにいる。
さらに、政府部隊とラカイン族の武装集団との戦闘で数万人の人々が生活の場を失っている。
こうした状況にもかかわらず、ミャンマーによる難民の帰還受け入れ準備は整っているというのが中国の立場だ。
ミャンマーとバングラデシュ両政府の当局者によると、中国は国連の役割を最小限に抑え、二国間協議による問題解決を提唱しているという。
中国は、ミャンマー、バングラデシュにおける外交努力を人道的なものと称しているが、ヤンゴンのアナリストや外交関係者は、こうした取組みはもっと大きな地政学的な狙いによるものだという。
「中国はこの地域における新たな調停役になりたいのだろう」と、米ワシントンのスティムソン・センターのユン・サン氏は言う。「主導権争いだ」
バングラデシュ領内のキャンプ地の1つ、クタパロンで難民のリーダー役を務めるノウキムさんによると、中国は単にミャンマーの公式の立場を後押ししているだけだという。ロヒンギャの要求を受け入れるようミャンマーに圧力をかけるつもりはない、というのが難民の中での一般的な受け止めだという。
難民のリーダーと中国当局者による会合を記録した動画からは、中国側がロヒンギャに対し、ミャンマーに暮らす民族として認められるなどの権利の要求を取り下げるよう求めている様子が分かる。
ミャンマー政府の主張では、ロヒンギャはインド亜大陸からのイスラム系移民であり、自国の民族集団の1つではない(国内の民族集団であれば制度上は市民権が付与される)。
ノウキムさんは、「中国側には我々の問題を簡単に解決しようという気がない」と語る。「単に世界に『我々はロヒンギャと面会した』という絵を見せたいだけだ」
空振りに終わった計画
昨年8月、中国政府はロヒンギャの帰還を本格的に推し進めようとした。ミャンマー側は帰還を認めた3000人のリストを作成したが、このうち数百人が身を隠し、試みは空振りに終わった。
バングラデシュ領内の難民キャンプの1つにいた中国の外交官は当時、誰かがロヒンギャを送り返す最初の動きを起こす必要があると語った。
ミャンマー側では当局者が待っていたが、自発的に帰還しようとする難民は1人もいなかった。ミャンマー政府によれば、その後に約400人の難民が個別に帰還しただけだという。
ロヒンギャ側によると、帰還した難民の大半はミャンマー政府に強い人脈があるという。
中国の取り組みに対しては、ミャンマー政府も一部拒否している。中国は昨年、難民にラカイン州訪問を認め、現地の状況を確認させようと提案したが、ミャンマー側は拒否した。
中国から贈られたコンテナの据え付けを請け負った地元の業者は、この仕事を続けることにほとんど意味を感じないと話す。
「2年間も誰も住んでいない。状況は変わっていない、そういうことだろう」
(翻訳:エァクレーレン)
[ヤンゴン ロイター]


アマゾンに飛びます
2020年2月4日号(1月28日発売)は「私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】」特集。声優/和菓子職人/民宿女将/インフルエンサー/茶道家......。日本のカルチャーに惚れ込んだ中国人たちの知られざる物語から、日本と中国を見つめ直す。