ミャンマー、終わらぬロヒンギャ難民危機 積極支援する中国の野心とは
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中国の習近平国家主席がミャンマーを訪問。アウンサンスーチー国家顧問と会談した。1月17日、ネピドーで撮影(2020年 ロイター/Ann Wang)
ミャンマー西部のぬかるんだ平原に、中国製のコンテナが整然と並ぶ。それぞれのコンテナには小さな窓が1つ。そこに入居する予定の難民たちの姿はまだない。
灰色のコンテナ群が中国から送られてきたのは2年前。ミャンマーからバングラデシュへ逃れた数十万人のイスラム系少数民族ロヒンギャを収容する低コストの仮設住宅としてだった。
国連は、2017年にミャンマー軍が主導したロヒンギャの弾圧をジェノサイド(虐殺)と認定している。
ミャンマー西部の戦略的重要性
ラカイン州マウンドーの近郊に設置されたコンテナが無人のままなのは、ミャンマーと関係が深い中国が仲介役を買って出る中でも、ロヒンギャ帰還を促す数カ月にわたる試みが成功していないことを反映している。
これまでも仲介を試みたインドネシアや国連の特使の場合と同様、近いうちに帰還が実現しそうな気配はない。中国は外交という「ビジネス」の難しさを味わっている。
主に障害となっているのは、難民がミャンマー国内で安全を確保できるのかという点で意見が割れていることだ。
ミャンマーはロヒンギャ帰還に向けて安全な条件を整えたと主張しているが、バングラデシュと国連は、ラカイン州は紛争が絶えず、人権が保障されないため、難民を帰還させるのは危険だとしている。当のロヒンギャは、現在は否定されている市民権と移動の自由が保障されない限り戻らないとしている。
中国は過去2年間、ミャンマーとバングラデシュの首脳会談を3回仲介した。当局者がバングラデシュ領内のロヒンギャ難民キャンプを何度も訪問し、難民を輸送する家畜運搬用トラックを調達し、現金を使って帰還を促したが、どれも功を奏さなかった。
これまでに帰還したロヒンギャは200─300人規模。それでも中国は、「進捗はあった」と主張している。
さきごろミャンマーを訪問した習近平国家主席は、共同声明の中で、中国が今後も仲介を続ける意欲を再確認した。ミャンマー側は「ラカイン州の問題、その困難さ、複雑さに対する中国側の理解」に感謝を示した。
習主席によるミャンマー訪問の焦点は、賛否の分かれる水力発電ダムやラカイン州の深水港など、中国支援による大規模なインフラ整備プロジェクトだ。これによってミャンマーは、世界中に交易ルートを広げることを狙った習氏の看板政策「一帯一路」構想に不可欠の一片となる。