最新記事

仮想通貨ウォーズ

決済や送金に乗り出すSNSが、それでも銀行を破滅させない訳

THE RISE IN SOCIAL MEDIA PAYMENTS

2020年1月28日(火)13時30分
シェリフ・サミ(フィンテック企業エンターセクトの北米担当上級副社長)

アップル(写真)などテクノロジー企業への信頼は既存の銀行に匹敵するとの調査結果も STEPHEN LAMーREUTERS

<ソーシャルメディアの決済・送金サービスへの進出は、既存の金融機関にとって追い風になる可能性がある。後者が生き延びる道はセキュリティーにあり>

ここ数年、ソーシャルメディア大手が続々と決済・送金サービスに進出する動きを見せている。モノやサービスの料金を支払ったり、ほかのユーザーに送金したりするためにソーシャルメディアを使っている人は、既に膨大な数に上る。

フェイスブックやツイッター、スナップチャットといった有力ソーシャルメディアは、大勢のユーザーを擁し、(ソーシャルメディアの性格上)双方向性が高く、ユーザーの利便性と質の高い利用体験を重んじている。自社の既存のサービスに金融サービスを新たに組み込むことは難しくない。

一方、ユーザーもこれらのソーシャルメディアを使い慣れていて、頻繁に利用している。そのため、ソーシャルメディア企業が提供する金融サービスをすんなり受け入れた。

コンサルティング会社のキャップジェミニと金融業界団体Efmaがまとめた2018年の「世界リテールバンキング・リポート」によれば、消費者の3分の1近くは、フェイスブックやアップル、グーグルといったテクノロジー企業の金融サービスを利用してもいいと思っているという。

いまリテール金融業界は大激変に襲われている。それが革命的な変化に発展する可能性もある。

金融機関は大きな岐路に立たされている。ソーシャルメディア企業と手を結び、自社の強みを生かして、よりシームレスで安全性の高いサービスを提供できれば、長期にわたり成長を持続できる。しかし新しい取り組みに乗り出さず、手をこまねいていれば、ますます変化に取り残され、やがては崩壊しかねない。

今日の消費者は次第に、既存の大手金融機関が提供するサービスに対して不満を強めている。キャップジェミニとEfmaの調査によれば、銀行の支店での体験に満足している人は消費者の51%だけ。インターネットバンキングに満足している人も51・7%にとどまる。

銀行のモバイルサービスに至っては、この割合は47%にすぎない。消費者のニーズが高まっているのは、もっと使いやすく、カスタマイズされていてシームレスな金融サービスだ。多くの従来型金融機関が現時点で提供できていないサービスは、将来的にソーシャルメディアにより提供されるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ

ワールド

米、ロシアが和平合意ならエネルギー部門への制裁緩和

ワールド

トランプ米政権、コロンビア大への助成金を中止 反ユ

ワールド

ミャンマー軍事政権、2025年12月―26年1月に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中