「気候変動は社会的転換点に突入した」
Thousands of Scientists Around the World Unite to Declare Climate Emergency
「パリ協定」離脱を宣言して得意満面のトランプ米大統領(11月4日) Yuri Gripas/REUTERS
<各世帯ごとに、生む子供を一人減らすことを考えるところまできたと、世界の科学者1万1000人が危機を宣告>
世界153カ国の1万1000人を超える科学者が「気候の緊急事態」を訴えた。彼らが署名した論文は「気候変動による筆舌に尽くしがたい苦難」を避けるためには「根本的な変化」が必要だと警告している。
米専門誌バイオサイエンスに掲載されたこの論文によれば、1979年にジュネーブで第1回世界気候会議が開催されてから40年経った今も、事態は一向に改善していない。その間、「気候変動の危機は到来」し、その損害は予想以上に深刻であるだけでなく、進行も当初の予想以上に速い。
論文のなかでシドニー大学のトーマス・ニューサムは、科学者には人類に対する重大な脅威について一般市民に警告する「道徳的義務」があると述べている。「われわれのもとにあるデータからは、人類が気候の緊急事態に直面していることは明らかだ」
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科学者たちは1992年にも論文「世界の科学者からの人類への警告」を発表し、地球が抱える問題を訴えた。今回の論文では、その後、改善が進んだ分野をあえて取り上げている。
「オゾン層を破壊する物質の排出量が急激に減少したことは、断固たる行動をとれば事態は改善できることを示している。極度の貧困と飢饉を減らす取り組みも前進した」と、オレゴン州立大学の著名な生態学者であるウィリアム・リップル教授は本誌に語った。
前向きな変化は限定的
再生可能エネルギー部門の急速な成長、世界の出生率の低下、ブラジルの熱帯雨林の消失に歯止めがかかったことなども、前向きな変化の例として触れている。
しかし、こうした進歩はいくつかの点で行き詰まりを見せている。21世紀に入ってから、出生率の低下は鈍化し、1992年以降、世界の人口は20億人増えた(35%の増加に相当)。ブラジルは環境保護政策を覆し、アマゾンの熱帯雨林の破壊が進んでいる。
同時に、化石燃料の需要は畜産物の消費増とともに急増し、地球の温度、海面水位、海洋酸性度は上昇し続けている。太陽エネルギーと風力エネルギーの消費量は10年ごとに約373%増加しているが、化石燃料の消費量(2018年の時点で28倍)に比べればごくわずかだ。
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「状況は悪いが、完全に絶望的というわけではない」と、ニューサムは言う。「人類は気候の緊急事態に対処するための措置を講じることができる」
科学者たちは、早急な対応が必要な6つの重点分野を挙げた。化石燃料からの脱却とカーボンプライシング(炭素価格付け)の導入、食品廃棄物と動物性食品の削減、それによって農業が地球に与えているストレスを軽減すること、などの提言が含まれる。