最新記事

躍進のラグビー

ラグビーの歴史・経済・未来・課題──今、歴史的転換点を迎えている

THE FUTURE OF RUGBY

2019年11月1日(金)17時15分
マルコム・ビース(ジャーナリスト)

グローバル化とプロ化(商業化)にはリスクも伴う。試合が以前にも増して利益を生むようになったことで、選手に求められる肉体的な強さもレベルアップ。それに伴い、選手が深刻なけがを負う危険性も高まっている。

ワールドラグビーでは肩より上へのタックルなどの危険行為を禁止し、脳震盪についても明確なガイドラインを設けている。反則は迅速に罰せられ、今回のW杯でも、10月15日の試合でアメリカ選手の頭を蹴ったトンガのパウラ・ヌガウアモには、すぐに7週間の出場停止処分が下された。審判が慎重過ぎるという不満の声もあるが、ワールドラグビーは方針を変えるつもりはないという。

このようにさまざまな問題は抱えているが、それでも世界的にラグビーに衰えの兆しはない。W杯は世界で大きな話題になっているし、選手たちにとっては今後のキャリアの可能性が開けるチャンスも秘めている。

ラグビーに携わっている人々は、世界各地で政治的・社会的な緊張や怒りが渦巻いているなか、W杯がラグビーの裾野を広げる格好のチャンスだと考えている。「多様性の受け入れ、規律の尊重といった素晴らしい精神がラグビーにはある」とRUNYのケネディは言う。「試合では相手をたたきのめすが、その後には笑い合い、ジョークを言い合ってビールを飲みに行く」

今回のW杯でもその精神を象徴するような場面があった。カナダのジョシュ・ラーセンが試合後に対戦相手の南アフリカのロッカールームを訪れ、レッドカードになった危険なタックルを謝罪したのだ。

試合は南アフリカが勝ったが、ここでもまたラグビーの基本的な価値観がそれ以上の勝利を収めた。「プロ化が進んでも、そこのところは変わらない」とケネディは言う。

ラグビーは変わった。しかしラグビーは変わらないのだ。

<2019年10月29日号(10月23日発売)「躍進のラグビー」特集より>

【参考記事】ラグビー場に旭日旗はいらない

20191105issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

10月29日発売号は「山本太郎現象」特集。ポピュリズムの具現者か民主主義の救世主か。森達也(作家、映画監督)が執筆、独占インタビューも加え、日本政界を席巻する異端児の真相に迫ります。新連載も続々スタート!

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中