ラグビーの歴史・経済・未来・課題──今、歴史的転換点を迎えている
THE FUTURE OF RUGBY
その他の国にも運営上の問題はある。「試合運営の専門化が進んでいるのは明らか」と指摘するのはラグビーのグローバル化に関する著書があるグラスゴー・カレドニアン大学のジョン・ハリス教授だ。「ただ、難題は山積している。アマチュアスポーツとしての価値もいくらか保つことも大切だ」
ワールドラグビーはアジアに続く新市場として北米に注目している。しかし、米MLRの経営は順風満帆、とは言い難い。
MLRのハウズはかつて米メジャーリーグ・サッカー(MLS)のリーグ運営に携わった。だが今年に入るとオーナーほぼ全員に背を向けられ、退任することになった。放映権交渉の費用などで数々の違反行為を指摘されたほか、CBSに制作費を払い過ぎたと一部のオーナーから非難された。そもそもリーグ運営に前向きでないと、以前からささやかれていた。逆に、ハウズによる功績を擁護する向きもあったが、結局はトップ交代で合意がまとまった。
ハウズは、自分としてはMLRと参加チームのオーナーに「大いに信頼」を抱いていると言う。日本のW杯はアメリカでのラグビー人気を後押しするだろうし、アメリカでW杯を開催すれば同じ効果が期待できるとも述べた。
今回のW杯でアメリカ代表チームが敗退した後、アメリカ代表のウィル・フーリー選手はガーディアン紙にこう書いた。「アメリカのラグビー関係者の間では、できるだけ早くアメリカでW杯を開きたい気持ちがある。W杯の開催によって、アメリカにおけるラグビーの存在感が一段と高いレベルに上がる可能性がある」
MLRが日本でのW杯と同様の成果をグラウンドの外でも上げられるかどうかは未知数だ。ハウズによれば、これまでのところ、MLRはどの国のモデルも真似しようとはしていない。その大きな理由はアメリカにはラグビーリーグを築くための歴史的な基盤が欠けているからだ。「日本モデルは確かに面白い。だが、それで自立できるのか」とハウズは懸念する。
東芝やサントリーなどの大手企業がトップリーグのチームを所有し、大多数の選手が同じ企業に勤めるという日本の投資モデルは日本のラグビー界を支えたが、同時に課題も増えた。日本のチームは、所属する会社の契約に縛られ、事実上身動きできない。別のオーナーの下で自立する経済的余裕がないからだ。