最新記事

躍進のラグビー

ラグビーの歴史・経済・未来・課題──今、歴史的転換点を迎えている

THE FUTURE OF RUGBY

2019年11月1日(金)17時15分
マルコム・ビース(ジャーナリスト)

magSR191101_rugby3.jpg

今やアメリカでも人気のラグビー COURTESY OF RUGBY UNITED NEW YORK

その他の国にも運営上の問題はある。「試合運営の専門化が進んでいるのは明らか」と指摘するのはラグビーのグローバル化に関する著書があるグラスゴー・カレドニアン大学のジョン・ハリス教授だ。「ただ、難題は山積している。アマチュアスポーツとしての価値もいくらか保つことも大切だ」

ワールドラグビーはアジアに続く新市場として北米に注目している。しかし、米MLRの経営は順風満帆、とは言い難い。

MLRのハウズはかつて米メジャーリーグ・サッカー(MLS)のリーグ運営に携わった。だが今年に入るとオーナーほぼ全員に背を向けられ、退任することになった。放映権交渉の費用などで数々の違反行為を指摘されたほか、CBSに制作費を払い過ぎたと一部のオーナーから非難された。そもそもリーグ運営に前向きでないと、以前からささやかれていた。逆に、ハウズによる功績を擁護する向きもあったが、結局はトップ交代で合意がまとまった。

ハウズは、自分としてはMLRと参加チームのオーナーに「大いに信頼」を抱いていると言う。日本のW杯はアメリカでのラグビー人気を後押しするだろうし、アメリカでW杯を開催すれば同じ効果が期待できるとも述べた。

今回のW杯でアメリカ代表チームが敗退した後、アメリカ代表のウィル・フーリー選手はガーディアン紙にこう書いた。「アメリカのラグビー関係者の間では、できるだけ早くアメリカでW杯を開きたい気持ちがある。W杯の開催によって、アメリカにおけるラグビーの存在感が一段と高いレベルに上がる可能性がある」

MLRが日本でのW杯と同様の成果をグラウンドの外でも上げられるかどうかは未知数だ。ハウズによれば、これまでのところ、MLRはどの国のモデルも真似しようとはしていない。その大きな理由はアメリカにはラグビーリーグを築くための歴史的な基盤が欠けているからだ。「日本モデルは確かに面白い。だが、それで自立できるのか」とハウズは懸念する。

東芝やサントリーなどの大手企業がトップリーグのチームを所有し、大多数の選手が同じ企業に勤めるという日本の投資モデルは日本のラグビー界を支えたが、同時に課題も増えた。日本のチームは、所属する会社の契約に縛られ、事実上身動きできない。別のオーナーの下で自立する経済的余裕がないからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国大統領府、再び青瓦台に 週内に移転完了

ビジネス

仏が次世代空母建造へ、シャルル・ドゴール後継 38

ワールド

原油先物は上昇、週末に米がベネズエラ沖で石油タンカ

ワールド

豪首相支持率が再選以来最低、銃乱射事件受け批判高ま
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 7
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中