ラグビーの歴史・経済・未来・課題──今、歴史的転換点を迎えている
THE FUTURE OF RUGBY
ウルグアイとディナポリの生まれ故郷のアルゼンチンは「別次元のまったく上のレベル」にあるが、全国的なプロリーグの創設が絶対に必要だ。現在、アルゼンチン人のプロ選手はたくさんいるが、ヨーロッパや、日本・オーストラリアなど5カ国から成る国際リーグでのみプレーしている。
「最も深刻なのは経済面だ」とディナポリは言う。「金がないから、ほぼ全ての仕事が無給で行われている。ラグビーが文化として定着していないところで成功を収めるのは難しい」
それでもラグビー人口は増えている。1997年にラグビー協会が創設されたペルーでは、2013年時点で同協会に所属していたのは6クラブと4大学のみだったが、現在は35クラブと22大学に増加。国内開催の試合に出る成人の選手は2000人に上る。首都のリマ郊外には代表チームのための新スタジアムも建設され、今後熱心なファンが増えていく可能性は高いだろう。
ワールドラグビーのフィリップ・ウィルキンソン広報担当によれば、アラブ首長国連邦やマレーシア、インドの協会も積極的に活動を展開。それぞれ自国政府と協力して、ラグビーを学校のカリキュラムに組み込むための取り組みを進めているという。
そして近年、目覚ましい成長を遂げているのが女子ラグビーだ。ワールドラグビーの女子部門統括責任者であるケイティ・サドラーは、「女子ラグビーはラグビー界にとって戦略的にとても重要な分野だ」と期待を寄せる。世界全体でも、この1年で登録選手の数は28%も増加した。
なかでも女子ラグビーが盛んなのはマレーシア、インド、イランと中国。北米は成長が停滞している唯一の地域だが、サドラーは特にアメリカでの普及に重点的に取り組んでいく考えだ。当面の目標は、女子ラグビーが全米大学体育協会(NCAA)の正式種目に採用されることだ。
人々を魅了するラグビー精神
伝統国以外でも女子ラグビー人気は確実に高まりつつある。7月のパンアメリカン競技会ではコロンビアがブラジルに意外な勝利を遂げて話題を呼んだ。ブラジルは7人制の女子競技で南米1位の座を維持しており、2020年の東京オリンピックに出場の可能性が高い。
10月5日と6日には、米コロラド州グレンデールでHSBCワールドラグビー女子7人制シリーズが開催された。優勝はアメリカだった。
アフリカのチュニジアでも10月半ばに同様の大会が開催され、12の女子チームが出場。南アフリカが前回優勝のケニアを15対14と僅差で破った。今後、各地域で正式にオリンピックに向けて代表チームが決定される。