最新記事

感染症

中国で2人がペスト感染でパニック、不安訴えるSNSは削除され......

2019年11月19日(火)17時40分
松丸さとみ

中国で相次いでペスト患者が発生している...... luismmolina-iStock

<12日、中国で内モンゴル出身の2人が肺ペストと診断され、また17日、新たに腺ペスト患者が出ている......>

内モンゴル出身の2人が北京で隔離

「中世ヨーロッパの病気」というイメージのペストが、再び人々を恐怖に陥れている。中国でこのほど、2人がペストに感染していていることが確認され、北京の施設に隔離されたことが明らかになった。しかし感染の経路やタイミングがはっきりしておらず、北京の住民はパニック状態になっている。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、北京と内モンゴルの衛生当局は12日、内モンゴル出身の2人が肺ペストと診断されたと共同で声明を発表した。病気が発覚したのはいつ、どこでかは明らかにされていない。2人は北京の朝陽区にある医療機関で治療を受けている。

ニューヨーク・タイムズ(NYタイムズ)は、中国疾病管理予防センター(CDC)が、ペスト拡大の可能性は「極めて低い」として、中国版ツイッターの「微博(ウェイボー)」で13日、北京市民に落ち着くよう呼びかけたと報じている。

CDCによると、感染した2人はすでに隔離されており、患者と接触した恐れのある人も検査され、関連した場所などはすべて消毒済みだという。

ペストは、腺ペスト、肺ペスト、敗血症型ペストの3種類に分けられ、もっとも多いのは腺ペストで、80〜90%を占める(国立感染症研究所)。14世紀に欧州を中心に猛威をふるい、大量の死者を出したのは腺ペストだが、国立感染症研究所は、肺ペストを「もっとも危険なタイプ」としている。

患者の初診から病名発表まで9日間

内モンゴル出身の患者2人を北京で最初に診察したとされる北京朝陽病院のリー・ジフェン医師は、中国のソーシャルメディア(SNS)「WeChat(微信、ウィーチャット)」で、患者が治療を受けにきたのは11月3日だったと明かした。投稿の中でジフェン医師は、中年男性1人が同病院に来た時点ですでに、10日ほど熱や呼吸困難に苦しんでいたとしており、男性を看病していた妻も、似たような症状を見せていたと説明した。

夫婦が診断に訪れてから当局の発表まで9日もたっていたわけだが、その理由としてジフェン医師は、このような感染症はさまざまな機関が協力して、繰り返し検証・調査・報告を行う必要があると説明。公的な発表は正確でなくてはならず、簡単に行えないためだと述べた。

ジフェン医師の一連の投稿は他のユーザーによって拡散されたが、すでにすべて削除されているようだ。

ペスト患者が出たことそのものやジフェン医師の投稿が削除されたことなどから、中国のSNSでは不安を訴える投稿が相次いだ。WSJは、2002年と2003年に中国で300人以上が犠牲になった重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き合いに出す人も少なくないと報じている。米外交誌フォーリン・ポリシーは、SARS流行時、中国当局がこの北京朝陽病院に患者を隠していたからだと指摘している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中