イラン政権転覆を狙う反体制派が抱える闇
Bracing for the Fall
もっとも、ほかの反体制組織の言い分は違う。彼らはMEKに足並みをそろえようと呼び掛けても、拒絶されてきたという。「気に食わない提案にはいっさい耳を貸さない」と、ある反体制組織のリーダーは言う(反体制勢力内の駆け引きに関する微妙な問題であることを理由に、匿名を条件に取材に応じた)。
元国王の息子が抱く野望
トランプ政権がイランを経済的に締め付けるなか、ここにきて元国王の息子レザ・パーレビがイランの現体制に対する批判を強めている。自らのリーダーシップの下に反体制勢力を結集し、民主的なイランを築こうと主張し始めたのだ。
とはいえ、パーレビはワシントン近郊で生活しているにもかかわらず、米外交関係者の間での存在感は乏しかった。カリスマ性と決意に欠けるとの評も聞こえてくる。1980年には自らがイラン国王だと名乗る声明を発表したが、のちに撤回している。
1980年代に、アメリカの情報機関がパーレビにある提案を持ち掛けたことがあったという。米軍の支援の下でペルシャ湾のイラン領の島、キッシュ島に王政派の部隊を上陸させようという内容だった。だがこの提案に対し、パーレビがアメリカ側に最初に尋ねたのは、撤退戦略についてだったという。
それでも2018年後半以降、パーレビは存在感を増すべく複数のシンクタンクと会談。現体制打倒に燃える反体制派として自らが果たし得る役割を説明してきた。政治的移行の共通計画策定に当たって自分は反体制派のリーダーになれると、彼は考えている。既に亡命イラン人の科学者や研究者や専門家と共に、イランで民主主義政府が直面するだろう問題に取り組む「フェニックス・プロジェクト」を始動。だがイランを統治する個人的野心は全くないという。
パーレビの支持者は欧米に亡命した複数の王政派グループのほか、数は不明だがイラン国内にもいて、一部は2017年の反政府デモで王政回帰を訴えた。
過去数年、欧州の亡命イラン人が始めたイラン向け衛星テレビ局数社が、王政時代への郷愁を誘うようなペルシャ語の番組を放映している。だが王政のペルシャ優越主義を忘れていないイランの民族的少数派には、パーレビは今も人気がない。一方、イラン系アメリカ人は、パーレビが指導的役割を担うのなら、亡き父親の独裁的な統治とは距離を置くよう強く要請している。
ワシントン中近東政策研究所のパトリック・クローソンは、パーレビは英王室のように形式的な王室の役割を好むのではないかと示唆。「彼はエリザベス女王になることを望んでいる」と、アトランティック・カウンシルのスラビンに語っている。