イラン政権転覆を狙う反体制派が抱える闇

Bracing for the Fall

2019年10月25日(金)19時00分
ジョナサン・ブローダー(外交・安全保障担当)

magw191025_Iran2.jpg

ジュリアーニ(左)とマリアム・ラジャビ(2018年パリ) SIAVOSH HOSSEINI-NURPHOTO/GETTY IMAGES

反政府勢力は一枚岩と言うには程遠く、専門家によれば政権を手にするチャンスを自ら遠ざけている。統一戦線をつくろうという動きは何度もあったが、過去の因縁や政策課題の違いからいずれも失敗に終わった。

政府施設や高官への襲撃、街頭デモといった形での反政府運動は、1979年のイスラム革命の頃からあった。だが最近の反政府運動は過去のものとは一線を画す。背景にあるのは経済の窮状であり、政府は新たな革命の発火点になるのを恐れて厳しい弾圧に踏み込めずにいる。「最近、彼ら(政府側)は慎重だ」と、民族系の反政府組織イラン・クルディスタン・コマラ党のアブドラ・モハタディ党首は語る。

イラン政府が行動変容に向けた交渉に応じなければ経済の破綻が近づくだけのことで、最終的にはイラン側が折れるだろうと、トランプ政権高官らは主張する。もっとも今のところ、イランは強気の発言やペルシャ湾を航行する船舶への妨害行為など、強硬な姿勢を崩していない。

一方で、イラン指導部は来年の米大統領選まで動くつもりはないとの見方も伝えられている。トランプが敗北すれば、民主党政権は制裁を解除し、2015年の核合意に立ち返るかもしれないと期待してのことだ。

「民主的」主張に疑問符

依然として多くの専門家が、現在の緊張状態が武力衝突へと一気に発展し、現政権が崩壊する可能性を指摘している。もしそうなれば、次にどのような政権が生まれるのか。さらには、反体制派はどのような新政権を思い描いているのだろうか。

MEKは10年ほど前から、自分たちは世俗的かつ民主的で非暴力の組織であり、イラン国内で広く支持されていると主張するようになった。

もっとも、アメリカの元高官やイラン問題の専門家の多くは、彼らが民主的だと称することにも国内の支持基盤の広さについても疑問を呈している。実際のところ、MEKの主張のほぼ全てが、否定と反論にさらされている。

MEKは1965年に、アメリカを後ろ盾としていた故パーレビ国王の王政に反対する学生を中心に結成された。マルクス主義とイスラム教という奇妙な組み合わせのイデオロギーを掲げ、イラン国王とその欧米の支持者に対し、初めて武力で立ち向かったグループでもあった。

1970年代に米陸軍大佐を3人、軍事請負業者を3人殺害し、数多くの米企業の施設を爆破したと、米情報機関はみている。米政府はMEKをテロ組織に指定した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む

ビジネス

SOMPO、農業総合研究所にTOB 1株767円で

ワールド

中国、米国の台湾への武器売却を批判 「戦争の脅威加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 9
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中