イラン政権転覆を狙う反体制派が抱える闇
Bracing for the Fall
なぜ、MEKは潤沢な資金を持っているのか。理由の一端は、以前の本誌の調査報道からうかがい知ることができる。イラク戦争終結後に発見された文書によれば、フセインはMEKに石油の売却を許可していた。具体的には、イラク戦争前の4年間に3800万バレル以上の売却が許されていたという。
MEKは、外国政府の諜報活動にとっても重要な存在になった。2002年には、イランのナタンズにあるウラン濃縮施設(当時はまだ秘密にされていた)の存在を暴露した。
それだけではない。2012年に米政府関係者がNBCニュースに語った話によると、2007年以降の5年間に、MEKはイランの核科学者を何人も暗殺している。そのための資金を提供し、暗殺者に訓練を施し、武器を用意したのは、イスラエルの情報機関モサドだという。
一方、イラクではMEKのメンバーが敵対勢力に殺害される事件が続発していた。これは、MEKを保護する役割を担っていたアメリカ軍のメンツをつぶす事態だった。
そこでヒラリー・クリントン国務長官(当時)は2012年、MEKがイラク国外に拠点を移せるよう、同組織に対する米国務省のテロ組織指定を解除した。テロ組織のリストに載っている限り、受け入れる国はないからだ。この国務省の措置により、MEKがアルバニアに拠点を移すことが可能になった。
しかし、テロ組織指定が解除されたといっても、MEKの性格や活動内容が変わったわけではない。「MEKは民主主義者であるかのように装うことに成功した」と、米国務省でテロ対策責任者を務めたダニエル・ベンジャミンは本誌に語っている。「MEKが変わったことを示す証拠は全くない......それに、イラン国内に支持者はいないに等しい」
一方で、MEKとその政治部門のイラン国民抵抗評議会(NCRI)の幹部たちは、このような見方を強く否定する。
「イランの現体制は40年間、嘘の情報を流し続けてきた」と、NCRIのワシントン事務所で責任者を務めるアリ・サファビは言う。「そのために莫大な資金をつぎ込み、欧米の有識者やロビイストの間に人脈を築き、反体制勢力を悪者として描いている。反体制派がイラン国内で支持されておらず、非民主的だというレッテルを貼ってきた」
現在、NCRIは「いくつかの反体制組織と約500人の有名な反体制指導者を糾合し、民主的で世俗的で核を持たない国づくりを目指している」と、サファビは言う。活動資金は全て、在外イラン人コミュニティーの裕福なメンバーの寄付で賄われているとのことだ。