ウイグル民族の文化が地上から消される
Cultural Genocide in Xinjiang
新疆全域のウイグル語出版は、現在壊滅状態になっている。新疆人民出版社の公式サイトを見る限り、同出版社は2017年以降、ウイグル語書籍を1冊も出していない。売ることが可能な書籍もなく、読もうとする人も街にはいないのだ。
本を出版しようにも、そもそも出版関係者が次々に強制収容されている。カシュガル地域で政治学習を担当する政府職員のRFAへの証言では、「カシュガルウイグル出版社は計14人(うち5人が女性)が拘束され、幹部経験のある高齢者まで強制収容所送りとなっている」という。同出版社の職員49人のうち、漢人幹部4人を除いた「少数民族」職員の3割が拘束されていることになる。
この政府職員は、「カシュガルウイグル出版社が過去に出版した600冊以上の書籍、新疆人民出版社が過去に出版した1000冊以上の書籍が有害書籍に仕分けされ、その著者や編集者、刊行に関わった全関係者が拘束された」とも証言する。
カシュガルウイグル出版社の元編集者で作家のハジ・ミリザヒッド・ケリミ(81)は、2018年に拘束され懲役11年の実刑が確定した。彼は自治区が主催する「天山文学賞」を2回受賞し、「21世紀のウイグル詩学に最も貢献した文化人」に選ばれた人物だが、11世紀の歴史人物ユースフ・ハース・ハージブについて描いた歴史小説が問題視された。同社編集者で女流詩人のチメングリ・アウット(45)も2018年に拘束された。
知識人根絶やしの効果
出版だけではなく、ウイグル語メディアや記者も「消滅」している。自治区西部イリで発行されていた「夕刊イリ」ウイグル語版とカザフ語版は、自治区政府の命令で今年から発行停止になった。評論家でジャーナリストのヤルクン・ルーズ(53)には「国家分裂主義者」として無期懲役が言い渡された。著名ジャーナリストで詩人でもあったワヒティジャン・オスマン(56)も消息不明になっている。長年にわたり小・中・高校のウイグル語教科書の編集も担当し、若いウイグル人なら誰もが彼の文章を読んだことがある、という人物だ。
学術界にも弾圧は広がっている。ニューヨーク・タイムズ紙によると、新疆大学人類学研究所教授ラヒレ・ダウットが北京で行方不明になったのは2017年12月。ダウットは北京師範大学で博士号を取得したウイグル文化研究の第一人者で、日本人研究者の菅原純と中央ユーラシアのイスラム聖者廟に関する研究書を出版した。新疆大学ではダウット含め、少なくとも56人の「少数民族」出身者が強制収容されていると言われている。