最新記事

インタビュー

元CIA局員たちへの取材で炙り出された、日米の諜報活動の実態

2019年9月18日(水)18時20分
小暮聡子(本誌記者)

――CIAという組織とその任務は、今も拡大しているのか。

実際のところの細かい人員数や予算は、機密情報なので分からないようになっている。ただおそらく、人材の質は変わっていたとしても、規模は変わっていないのではないか。いま諜報活動は過渡期にあって、デジタル化が進み、ハッキングなどが非常に重要になっている。

昔は人を尾行していたが、今はその必要もない。かつてはウォーターゲート事件じゃないが、ビルに入り込んで情報を盗むということをやっていたが、今はその必要もない。

例えば、イスラエルのネタニヤフ首相は昨年、イランが核兵器を開発していると言ってイスラエルの国防省で会見を行った。その証拠がこんなにあると、イランから盗んできたという資料を大量に提示した。たぶん盗んだものをヘリにでも乗せて逃げて来たのだろうが、今はその必要がない。

物理的に持ち出して、逃げてくるのは大変だしリスクが伴う。いかにデジタル化して盗むことができるか、という技術力のほうが今は重要になっている。スパイ活動も変わりつつある。

――CIAはハッカーを養成しているのか。

CIA専門のハッカーはいる。ハッカーなどを扱っていた元CIA幹部を知っているが、局員以外でも協力者や契約職員としてハッカーを囲っている。アメリカにはNSA(国家安全保障局)があるので、そこには米国でトップの数学者やハッカーたちが揃っている。

NSAは軍寄りなのでCIAとはあまり仲が良くないと言われるが、作戦になると一緒に活動する。例えばアフガニスタンにドローンを飛ばす指揮はCIAがとるが、どこに敵がいるかをハッキングや盗聴などで調べるのはNSAなどの組織だ。

――日本にCIA工作員はどれくらいいるのか。

分からない。だが1つだけ言えるのは、日本からも欲しい情報はあるということだ。日本の中枢にいるような人たちで、日本版の国家安全保障会議(NSC)とか、内閣情報調査室とか、ああいう情報関係の人たちはCIAとつながっているだろう。これらで働く人たちは、部下たちからすぐに情報を集められる。

情報の世界は絶対にギブ・アンド・テイクなので、ギブだけというのはあり得ない。テイクしないといけないので、おそらく日米もある程度はギブ・アンド・テイクでやっている。当然、提供できない情報はあるだろうが、日米間で「協力」というのは常にやっていると思う。

日本の場合はアメリカから情報を盗まれても致命的になるほどではないのではないか。ただ、それが経済問題や民間企業の場合は、知的財産などが盗まれることになる。例えば名古屋にもCIAの協力者が実際にいたと聞いている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正-米CPI、3月は前年比(前月比は誤り)+2.

ビジネス

米新規失業保険申請4000件増の22.3万件、関税

ビジネス

プラダ、ヴェルサーチを13.7億ドルで買収 イタリ

ビジネス

米国株式市場・寄り付き=急反落、ダウ700ドル超安
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた考古学者が「証拠」とみなす「見事な遺物」とは?
  • 4
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 9
    【クイズ】ペットとして、日本で1番人気の「犬種」は…
  • 10
    「宮殿は我慢ならない」王室ジョークにも余裕の笑み…
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 10
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中