最新記事

日本社会

都市部で広がる子どもたちの「勉強時間格差」

2019年8月21日(水)16時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

教育格差が広がればじわじわと日本社会の階層分化が進むことになる MachineHeadz/iStock.

<「学校の勉強が全てではない」という言説に、勉強が振るわない子どもは飛びつきやすい>

2000年代の初頭に、苅谷剛彦教授が「意欲格差」という概念を提起して注目を集めた。学習意欲の格差のことで、勉強する子としない子の分化が明瞭になってきているという(『階層化日本と教育危機』有信堂高文社、2001年)。

勉強への圧力が弱まるなか、高校生の勉強時間は70年代から90年代にかけて短くなっているが、親が低学歴のグループでその減少幅が大きい。結果として勉強時間の階層格差が開いている。外圧がなくても勉強する生徒と、そうでない生徒の格差の拡大だ。2002年に完全実施された「ゆとり学習指導要領」の下、こうした格差が広がっているのではないかという懸念が持たれる。

毎年実施される『全国学力・学習状況調査』では、対象の児童・生徒に1日の勉強時間を尋ねている(学校の授業以外の勉強時間で、学習塾や家庭教師等での学習も含む)。最新の2019年度調査のデータのうち、小学校6年生の回答分布をとると<表1>のようになる。秋田県と大阪府のケースを比較した。

data190821-chart01.jpg

秋田県は中層が厚くなっている。平日の勉強時間が1時間台の児童が半分以上を占める。極端に長い子と短い子に分かれてはいない。皆が普通に勉強する習慣がついている。秋田県では学校で配られるオリジナルの自習ノートで、全ての子どもが一定時間宅習をするということだが、全国でも学力最上位となる要因の一端がうかがえる。

大阪府は、勉強する子としない子の分化が大きい。3時間以上が13.5%である一方で、30分未満も16.7%いる。塾通いしている子とそうでない子の差とみられる。6年生になると中学受験の準備をする子が多くなるので、宿題を出さない学校もあると聞く。生活保護世帯のような困窮層が相対的に多いことにもよるだろう。子どもの勉強時間の散らばりが大きいケースだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 10
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中