最新記事

イスラエル

トランプがツイート→イスラエルが入国禁止 ネタニヤフの危険な賭け

2019年8月19日(月)16時20分
ジョシュア・キーティング

ネタニヤフにとってトランプからの支持は生命線だが REUTERS

<イスラエル首相が米民主党議員2人を入国禁止に。トランプに逆らえない「お友達」ネタニヤフの命運は>

米民主党のラシダ・タリーブ、イルハン・オマル両下院議員が15日、イスラエル政府から同国への入国禁止を言い渡された。イスラエルを批判したからではない。2人がトランプ米大統領の「敵」だからだ。

パレスチナ系のタリーブとソマリア難民のオマルはトランプが「国へ帰れ」と名指しして物議を醸した非白人系女性下院議員4人組、通称「スクワッド」のうちの2人。イスラエル政府は当初、両議員の訪問を認める方針だったが、トランプは「入国を許せばイスラエルは大変な弱さを示すことになる」とツイートで警告。イスラエル政府は当然のことながら、その日のうちに入国禁止を発表した。

イスラエルのネタニヤフ首相にとって、トランプからの支持は最優先事項。約1カ月後の9月17日に総選挙を控え、トランプの機嫌を損ねる事態は何としてでも避けたい。

ネタニヤフはこの決定を、2人がイスラエルのパレスチナ政策に対する抗議運動(英語の頭文字からBDS運動と呼ばれる)を支持しているからだと説明した。

確かにイスラエルは、BDS運動を支持する外国人の入国を法律で禁じている。タリーブとオマルはBDSの支持者だが、ロン・ダーマー駐米イスラエル大使が「米議会への敬意を表し」入国を許可すると発表したばかりだったことを考えれば、トランプの一声で方針転換したことは明らかだ。

この法律は17年に制定され、過去にはノーベル賞を受賞したアメリカ・フレンズ奉仕団なども「ブラックリスト」入りしている。ヘブライ大学で学ぼうとしていたパレスチナ系アメリカ人がBDS支持者と見なされ国外退去を命じられたこともある(のちに撤回)。

ただ、イスラエル政府は時に柔軟性も見せてきた。当初は2議員の入国を受け入れるつもりだったのがその証しだ。

トランプ追従は命取りか

今回はそこにトランプが唐突に介入したわけだが、その政治的意図は明らかだ。何としてでもアメリカ初の女性ムスリム議員の2人を民主党の「顔」に仕立て上げ、同党が「反イスラエル」であるという印象を植え付ける。そうして自らの支持層である右派やキリスト教福音派にアピールし、ユダヤ人の民主党離れを狙っているのだろう。

このトランプのもくろみに同調するのは、イスラエルにとって危険度が大きい。かつてアメリカは超党派的にイスラエルを全面支持してきたが、最近の民主党はイスラエル政府、とりわけネタニヤフに批判的だし、イスラエルに対するアメリカの立場は今まで以上に党派的に割れつつある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦が発効、人質名簿巡る混乱で遅延 15カ月に

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中