アメリカ心理学会「体罰反対決議」の本気度──親の体罰を禁じるべき根拠
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<体罰の悪影響は科学的にも証明され、既に54カ国で家庭での体罰が違法とされている。6月19日、しつけとしての体罰を親に禁じる改正法を成立させた日本が、体罰の悪影響を直視すべきこれだけの理由>
科学的な議論の蓄積に対し、政治が無視を決め込むことはしばしばある。例えば、体罰の悪影響が科学的に証明されているにもかかわらず、政治的な対応がなされてこなかったこともその一つだ。
2019年初頭から、千葉県野田市での少女虐待死事件などを受けようやく国会で「体罰禁止法」を作成しようという動きが活発化した。今年5月には、児童虐待防止法に体罰禁止が明記された。
そして6月19日、しつけとしての体罰を親に禁じる改正児童虐待対策関連法が参院本会議で可決、成立。一部を除いて2020年4月1日に施行されることになった。民法が規定する親の子どもに対する「懲戒権」のあり方についても、改正法施行後2年をめどに検討するとした。このような動きは歓迎すべきだが、体罰論議を注視してきた立場としては、「もっと早く出来たのではないか」と思わざるを得ない。
世界を見渡せば、2018年の段階で既に54カ国が家庭での体罰を法律で禁じている(Global Initiative to End All Corporal Punishment of Children, 2019)。日本でも最近の世論調査では、体罰の法的規制に賛成多数の結果が出ている。(朝日新聞デジタル、2019年2月18日)。
一方で、体罰規制については未だに反対意見もあるようだ。例えば自民党の厚生労働相経験者は、「電車内で泣く子どもに『静かにしなさい』と腕をつかんだり、おしりをたたいたりするのも体罰と言うのか」(東京新聞、2019年3月20日)と述べ、他の与党保守派議員も「家族の在り方に踏み込むべきでない」(毎日新聞、2019年2月17日)と述べている。
また、6月3日の産経新聞は、「懲戒権がないからと手をこまねく事態は最悪であろう。懲戒権については、廃止ありきの議論ではなく、その内容を精査、検討すべきである」との「慎重論」を社説として掲載した(産経新聞,2019年6月3日)。
規制に反対、あるいは慎重なだけでなく、むしろ体罰を推奨する人々もいる。著名な保守論客が多く参加していた「体罰の会」は、「子供には体罰を受ける権利があります」「体罰を受けた子供は進歩します」などと主張してきた。
現在はサイトが削除されているものの、「体罰の会」ウェブサイト内に設けられた「体罰に関するQ&Aコーナー」では、体罰による暴力の連鎖やトラウマについて、「誰か確認したのでしょうか」「マスコミの歪曲」「体罰世代の我々のどこにトラウマが残っているのか」などと「反論」(?)を繰り広げるなど、過激かつ非科学的な主張を続けてきたのである(戸塚, n.d.)。