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不法移民メキシコ、米の「安全な第三国」指定拒否へ トランプの対メキシコ関税はブーメランに
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6月3日、メキシコのエブラルド外相は、米国が同国を「安全な第三国」に指定し、米国への難民申請者を移送してメキシコで保護するという案を米国側が提示しても拒否する考えを示した。写真は米国との国境のフェンスを撮影するメキシコの警察官。シウダー・ファレスで5月に撮影(2019年 ロイター/Jose Luis Gonzalez)
メキシコのエブラルド外相は3日、米国が同国を「安全な第三国」に指定し、米国への難民申請者を移送してメキシコで保護するという案を米国側が提示しても拒否する考えを示した。両国の交渉団は3日から移民問題で協議を開始する。
エブラルド外相は、中米からの不法移民が米国との国境に到達するのを防ぐ取り組みを継続的に行う決意を表明。ただ、メキシコを「安全な第三国」とし米国で難民申請する移民をメキシコでの移民申請に強制的に切り替えるという、一部の米当局者が好む案については、選択肢にはないと断言した。
外相はワシントンで記者団に「米国側からはまだ提案されていないが、受け入れることはできない案で、米側もそれを知っている」と述べた。
同外相はワシントンで予定される一連の高官協議でポンペオ米国務長官と会談する予定。トランプ米大統領が発動する構えの対メキシコ関税について、最終的には米国市場に出回る幅広い商品の価格上昇につながるとの懸念もあり、金融市場は協議の行方に注目している。
トランプ大統領は前週、メキシコ国境からの不法移民流入に同国が十分に対応していないとし、6月10日以降メキシコからの輸入品すべてに5%の関税を課し、移民の流入が止まるまで関税率を段階的に引き上げると表明した。
世界の金融市場には動揺が走り、3日の原油先物は、米中および米・メキシコの貿易摩擦が世界的な原油需要低下につながるとの懸念が高まったことで下落した。
メキシコ料理チェーンを展開する米チポトレ・メキシカン・グリルは3日、対メキシコ関税導入によって約1500万ドルのコストが発生するとの試算を示した。
米国の経済団体も関税発動に反対しており、全米商工会議所は法的措置を含む異議申し立てについて検討していると明らかにしている。
米国の優先項目
マカリーナン国土安全保障長官代行は2日、メキシコは不法移民対策としてグアテマラとの国境沿いの国境警備職員を増やすべきと指摘。協議で米国が優先項目として提案する可能性がある。
メキシコのロペスオブラドール大統領は今年に入り、不法移民の拘束と強制送還を強化してきた。ただ、中米グアテマラやホンジュラスなどから米国に向かう移民の流れは阻止できていない。
米当局者によると、8万人の不法移民が収容所で拘束されており、4月には中米などから10万人以上が米国境に到達、米国境警備職員の手に負えない状況となった。
メキシコは昨年12月に米国に難民申請する不法移民をメキシコで待機させる米政府の方針を受け入れた。これまでのところ8835人がメキシコに移送されている。
メキシコ経済は米国向け輸出への依存度が高いため、制裁関税が発動されれば影響は大きい。トランプ大統領は関税率を最終的に25%まで引き上げる可能性があるとしている。
ゴールドマン・サックスのエコノミストらは6月10日に5%の対メキシコ関税が発動される確率は70%と予測した。
米政府統計によると、2018年のメキシコの米国向け輸出は3470億ドルに上っており、5%の関税は6月10-30日の期間に約10億ドルの税負担が発生することを意味する。
メキシコのセアデ外務次官(北米担当)は移民問題を巡る対立は北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新協定の批准を妨げる可能性があると警告している。
ゴールドマン・サックスのエコノミストらは新協定「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)」が年内にカナダを含む3加盟国による手続きを経て批准される確率を60%から35%に引き下げた。
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