絶滅危機から「ハリネズミ戦争」での肥満まで──欧州ハリネズミの受難
クイーンのブライアン・メイも支援活動を開始 Jaroslav Frank-iStock
<英国でかつてから愛されているハリネズミが半減している。そこでクイーンのブライアン・メイが支援活動を始めたり、都市部では逆に餌付けされ餌のやりすぎが問題になったりしている......>
20年弱で半減、「手を打たないと絶滅」
英国をはじめとする欧州でハリネズミの受難が続いている。住むところや餌が減ったために個体数が激減し、絶滅の危機に瀕している。英国ではさらに、希少動物と化してしまったハリネズミがひょっこり自分に家の軒先に現れたことに喜んだ住人に大量に餌付けされ、ハリネズミたちは肥満に苦しむようになってしまった。
ドイツの国際公共放送ドイチェ・ヴェレは、ハリネズミがドイツのバイエルン地方で、絶滅が危惧される哺乳類動物の警告リストに加えられたと伝えている。同局はまた、英国での状況も深刻で、1950年代には3000万匹いたと考えられていたハリネズミは、2019年現在では100万匹にまで減ったとしている。個体数減少のスピードは近年特に速く、2000年以降は半減したという。
英国のニュース専門チャンネル、スカイニュースは、英国のハリネズミは2008年以降、個体数が農村部で半減、都市部で約30%以上減少したとし、「何かしら手を打たないと、ハリネズミが永遠に消えてしまう」と訴えている。
スカイニュースによると、ハリネズミが農村部を中心に激減している主な理由は、生息地が減ったこと、餌になる昆虫の幼虫やナメクジ、ミミズの数が減っていること、道路でひき殺されること(年間10万匹がこれに該当する)、アナグマやキツネによる捕食、などだ。
またドイチェ・ヴェレは、大規模農業が盛んになり、ハリネズミの住みかとなる雑木林や生垣、木が伐採されてしまっていることも挙げている。農薬の使用で、前述のハリネズミの餌となる生物が死んでしまっていること、壁やフェンスがあちこちにでき、ハリネズミが移動して繁殖するのを妨げていることなども原因だと指摘する。
庭にやってきたハリネズミ、厚遇で肥満に
そんなハリネズミだが英国では相変わらず愛されており、激減しているハリネズミをなんとか救おうという慈善活動も活発に行われている。ロックバンド、クイーンのブライアン・メイさんも、ハリネズミの窮地をなんとかしようと奮闘している1人だ。サリー州の自宅に巨大な救助センター「アメイジング・グレイス」を立ち上げ、弱ったハリネズミを迎え入れてリハビリテーションを行い、元気になったら野生に戻す、という活動をしている。