絶滅危機から「ハリネズミ戦争」での肥満まで──欧州ハリネズミの受難
自宅の庭にやってきたハリネズミを手厚く迎え入れるのは何もメイさんだけではない。英国の一般家庭でも、庭にひょっこりやってきたハリネズミを迎え入れ、もてなしすぎて逆に肥満に至らせてしまう、という問題が浮上している。
前述のアメイジング・グレイスをメイさんと共同で立ち上げたアン・ブラマーさんが「ハリネズミ戦争」と呼ぶ現象だ。ブラマーさんが英ザ・タイムズ紙にした説明によると、せっかく来てくれたハリネズミをよその家の庭に行かせたくない、また我が家の庭に来てほしい、という思いから餌を与えすぎる人が多いのだと言う。
農村部では餌の激減が個体数減少の問題点だが、都市部においては餌のやりすぎが問題だとブラマーさんは説明する。そして常に餌がもらえる状態になると、ハリネズミの様子が変わってきてしまう。肥満になり、体に生えているハリが薄くなり、冬眠のパターンも変わってしまうのだ。タイムズ紙によると、通常は冬眠しているはずの冬季にもハリネズミの赤ちゃんの姿が確認されているという。
とはいえブラマーさんは、ハリネズミに餌や水をあげるのは大切だとも念を押す。英国ハリネズミ保護協会のフェイ・ヴァス氏もこれに同意。タイムズ紙に対し、全国的には餌のやり過ぎよりも餌の不足の方が心配されていると話し、「餌と水を与えるのは良いことです」と強調している。ちなみにブラマーさんは、ハリネズミが自宅の庭に来たらキャットフードと水でもてなすことをお勧めしている。