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アメリカ社会

アベンジャーズ大ヒットを支えたもう一つの要因 「薬物使用俳優」に寛容な米国社会

2019年5月8日(水)11時40分
猿渡 由紀(L.A.在住映画ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

フィリップ・シーモア・ホフマンが亡くなったとき、『ハンガー・ゲームFINAL:レボリューション』を撮影中だったが、彼の出演シーンはほとんど撮影が済んでおり、残りは脚本の書き換えで対応した。

それらの映画が公開されたとき、人々は、純粋に彼らに敬意を捧げ、才能ある人を失ったことを悲しんでいる。違法ドラッグをやるから悪いのだというような声はまるで出ないし、レジャーは死後に『ダークナイト』でオスカー助演男優賞を受賞してもいる。

リバー・フェニックス、ジョン・べルーシ、ホイットニー・ヒューストン、クリス・ファーレイなど、ハリウッドはあまりにも多くの人々をドラッグのせいで失ってきているがために、この悲しい現実を人は受け入れ、「また起きてしまったのか」と、ただやるせなさを感じるのかもしれない。

だからこそか、アメリカはまた、カムバックストーリーを非常に愛する。代表の1人は、ドリュー・バリモアだ。明るくチャーミングな彼女が、13歳で依存症更生施設に入ったことは、もはや知らない人のほうが多いかもしれないが、彼女は自分のそんな時代についての回想録も出版している。2000年代半ばに何度かヘロインほかの薬物所持で逮捕されたニコール・リッチーも、今では幸せな妻、母として、好感をもたれる存在になった。

アイアンマンを悩ます悪魔

そんな中でも、やはりいちばんはダウニー・Jr.だろう。6歳のときに依存症の父からマリフアナを教わり、若い時期をドラッグとアルコール漬けで過ごしてきた彼は、2003年にきっぱりと薬物を捨て、カリフォルニア州知事から恩赦も受けた。しかし、そうやって暗い過去とすっかりさよならできるかと思いきや、そうもいかなかった。

今度は彼の長男でミュージシャンのインディオがコカイン所持で逮捕され、治療を受けることになったのだ(2016年には、リハビリを終了したとのこと)。アイアンマンをもってしても、薬物という悪をやっつけるのは難しいのである。

悪魔はいつも、すぐ隣にいて、優しくほほ笑んでいるのだ。自分は打ち勝っても、次にわが子や友達が狙われるかもしれない。その戦いにハリウッドが打ち勝つ日は、はたして来るのだろうか。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
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