激化する米中5G戦争 ファーウェイ排除、発端は豪政府のサイバー演習
ファーウェイの反撃
西側諸国とファーウェイの間の緊張が高まる中で昨年末には、ファーウェイ幹部の個人的な問題も表面化した。米国の要請を受け、同社の孟晩舟(メン・ワンツォウ)副会長兼最高財務責任者(CFO)が12月、カナダのバンクーバー空港で拘束されたのだ。
創業者の娘でもある孟CFOは、国際的な金融機関を欺いたとして米当局に起訴されており、米国への身柄引き渡しを巡り係争中だ。
捜査に詳しい関係者によると、ファーウェイを巡る対立の背景にあるのは米中間の摩擦だけではない。孟氏とファーウェイの活動について米当局は、両国間の貿易戦争が勃発する以前から目を付けていたという。ただ、ここまで激化した対立は、言うまでもなく、地政学的問題の様相を呈している。
ここ数カ月、ファーウェイ排除に向け、米国は同盟諸国に対する働き掛けを強めてきた。米国のゴードン・ソンドランド駐欧州連合(EU)大使は2月にロイターに対し、5Gは社会のあらゆる側面に影響を及ぼす技術だと述べた。その上で、「常識的な判断として、悪質行為を行ってきた勢力に、社会全体の鍵を手渡すべきではない」と強調した。
ファーウェイ機器がスパイに使われたという証拠があるのかという問いに対しては、「機密扱いの証拠がある」と応じた。
ポンペオ米国務長官は3月、「ファーウェイは中国の国有企業で、中国の情報当局と深い関係がある」とさらに踏み込んで発言している。
同社は中国の政府や軍、情報当局のコントロール下にあるとの見方を繰り返し否定してきた。「ポンペオ国務長官は間違っている」との声明を出し、同社は社員が保有していると説明した。
同社は当初、公然と米国などの対応を批判することは控えていたが、次第に対決姿勢を強めている。2月下旬にスペインのバルセロナで開かれたモバイル業界の見本市では、政府や企業にファーウェイ排除を訴える米政府当局者らと、欧州諸国や顧客に安全性を担保するために派遣された同社の幹部らが火花を散らした。
ファーウェイの郭平(グォ・ピン)副会長は講演で、スノーデンNSA元職員が暴露した「プリズム」と呼ぶ米情報収集活動を念頭に、「壁にはプリズムがある。最も信頼できるのは誰か」と揶揄(やゆ)した。聴衆からは笑いが起きた。
欧州通信会社の幹部も米当局者に対し、ファーウェイが安保上のリスクだという決定的証拠を示すよう迫ったという。
米当局者は、決定的な証拠を待ってからでは遅いと反論した。「もし銃から煙が出ているとすれば、すでに撃たれている。弾丸をこめた銃の前で、なぜ並んでいるのか私には分からない」
(Cassell Bryan-Low記者, Colin Packham記者, David Lague記者, Steve Stecklow記者, Jack Stubbs記者、翻訳:石黒里絵、山口香子、編集:下郡美紀)
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