激化する米中5G戦争 ファーウェイ排除、発端は豪政府のサイバー演習
西側諸国の認識に変化
オーストラリア政府は、昨年半ばにかけて5Gに関する懸念を他国に訴え続けた。ある豪政府高官は「安保上の懸念を多くの同盟諸国と共有した。米国や従来のパートナー諸国だけではない。日本、ドイツなどの欧州諸国、韓国と見解を共有した」と語った。
米政府がファーウェイに対する規制を導入し始めたのも昨年半ばだ。トランプ大統領は8月、米政府機関がファーウェイ及び中国の同業、中興通訊(ZTE)と取引することを禁止する法案に署名した。
8月下旬に豪政府は、セキュリティー要件を満たさない企業が国内の5G網に機器供給することを禁じ、一段の強硬措置に踏み切った。ファーウェイも排除の対象となった。
中国外務省は声明で、オーストラリア政府の決定は事実に基づく根拠がなく、「安全保障」基準を乱用していると非難した。
ニュージーランドの政府通信保安局は11月、5Gネットワークでファーウェイ製機器の使用を求める国内業者による最初の認可申請を却下した。
英国の安保当局もファーウェイ製品がスパイに使われる可能性について懸念を抱えていたが、選択肢は限られていた。ファーウェイ以外に広範な先進移動通信ネットワークを提供できるグローバル企業はスウェーデンの通信機器大手エリクソンとフィンランドのノキアだけだ。その中でも、ファーウェイは低コスト機器を迅速に供給できるとの評判を確立していた。
にもかかわらず、英当局者はファーウェイが自社製品に組み込まれているソフトウエアの欠陥を修正できないことに苛立ちを覚えていた。特に、プログラムの設計図とも言えるソースコードの食い違いを問題視した。研究所で検査している同社のコードが、実際に世に出る製品に使用されるコードと同一かを確かめることができなかったからだ。これにより機器の安全性を保証することが難しくなった。
英国のセキュリティー担当当局者のイアン・レビー氏は、同社のソフトウエア設計は20年前のレベルだと指摘。「ファーウェイ機器が脆弱である確率は他のメーカーに比べてはるかに高い」とロイターに語った。
同社は向こう5年に20億ドル以上を投じてソフト設計能力を向上すると宣言している。
英政府はファーウェイについて、5Gネットワークへの限定的な参入を認める方針だが、最終決定はまだ発表されていない。