アポロ11号アームストロング船長の知られざる偉業
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さらにはテスト飛行で宇宙飛行士3人が立て続けに亡くなる事故があり、有人飛行のコストやリスクを疑問視する声も上がっていた。だからこそ、ジェミニ計画は何としてもスケジュールどおりに進める必要があった。
ところが、実際には大惨事の一歩手前まで行ってしまった。パイロットたちは自分の能力を限界まで発揮して地球に生還した。そしてアームストロングは、この危機からの生還で評価を確立した。彼こそ初めて月面に降り立つ宇宙飛行士にふさわしいと......。
ジェミニ8号のミッションの滑り出しは好調だった。2週間前に機器にいくつか問題が見つかっていたが、66年3月16日午前10時41分に打ち上げ。周回軌道に到達するとアームストロングは無人標的衛星アジェナに接近すべく、推進装置のスイッチを入れた。95分前に打ち上げられたアジェナは、ジェミニをより高い軌道で待ち受けていた。
故障続きだった標的衛星
ジェミニのコンピューターが2機の位置を特定し、移動する曲線を割り出した。打ち上げから6時間もたたないうちに、ジェミニ8号は太陽光を受けて銀色に輝く全長8メートルのアジェナから45メートル離れた位置に停止した。これでランデブーは成功だ。
アジェナに問題がないことを確認した後、アームストロングはアジェナにゆっくりと1メートルまで接近。絶妙なタイミングとソフトな接触が要求されるドッキングに取り掛かった。バドミントンのシャトルに似たジェミニ8号の先端部は、巨大な魔法瓶のようなアジェナにすっぽりはまった。
「管制室、ドッキング終了......実にスムーズだった」。アームストロングはそう告げた。初の宇宙空間でのドッキング成功に、地上の管制センターでは歓声が沸き上がった。
実際、アジェナはNASAにとって頭痛のタネだった。ドッキングを行う予定だった5カ月前のジェミニ6-A号のときは軌道に向かう途中で爆発していた。だから地上に待機する通信係の宇宙飛行士ジム・ラベルはマダガスカルの追跡基地を通じて、ジェミニ8号が通信圏外に入る直前にこう警告した。「アジェナの姿勢制御システムがおかしくなったら......システムを切って、そっちでうまく制御してくれ」
そして通信は途絶えた。アームストロングとスコットは船内のライトをつけ、手引書を取り出してドッキングに伴う作業をやり、システムをチェックした。夜になったので船外はよく見えなかった。さらに2時間ほど作業した後、2人は眠ろうとした。翌日に2時間以上の船外活動をする予定のスコットには睡眠が必要だった。
ドッキング成功から27分後、コントロールパネルを見上げたスコットは機体がゆっくりと、30度の角度で左に回転していることに気付いた。それを聞いたアームストロングは、姿勢制御用推進装置で修正を試みた。回転は止まった。だが、数分後に再び回りだした。
そして起こった想定外の事態
ラベルの助言を思い出したアームストロングは、スコットにアジェナの姿勢制御システムを切らせた。すると回転は止まったが、数分後に再び、今までより高速で回転し始めた。
電気系統の問題を疑ったアームストロングはスコットに、アジェナの電源を入れ直し、再び切るように伝えた。その間、自身は操縦席の姿勢制御装置で機体の動きを安定させようと試みたが、うまくいかない。