中国のAI巨大戦略と米中対立――中国政府指名5大企業の怪
これらの理由を裏付ける事実に関しては多くのコラムを書いてきた。たとえば、2018年12月30日付のコラム<Huawei総裁はなぜ100人リストから排除されたのか?>や2019年1月19日付けの<Huaweiの任正非とアリババの馬雲の運命:中共一党支配下で生き残る術は?>などで述べた。
このたびBATISに選ばれなかったという「客観的事実」は、また一つ、「Huaweiが中国政府と結託していない」証拠として挙げられるのではないだろうか。
アメリカがHuaweiを叩き潰したいのは、まさに1980年代、日米半導体協定によって、世界一だった日本の半導体を沈没させてしまったのと同じ理由だ。2018年12月24日付けコラム<日本の半導体はなぜ沈んでしまったのか?>に書いたように、アメリカは同盟国の日本に対してさえ「アメリカの国家安全を脅かす」として、日本の半導体を叩き潰してしまった。だからHuawei叩きの目的が半導体潰しであることは明白だ。
もし、本当にHuaweiが「情報を抜き取って中国政府に渡している」ということを疑うが故にHuawei叩きをしているのであれば、先ずその証拠を出さなければならないだけでなく、なぜ諜報活動(スパイ行為)を専門とする部局である「中国人民解放軍戦略支援部隊サイバー空間情報分隊」や「国家安全部」を狙い撃ちしないのか。Huaweiに注目させている間に、中国はスパイ活動をやりたい放題実行しているにちがいない。
BATISに選ばれないほど、Huaweiは中国政府とは疎遠で、癒着などしていないことになろう。Huaweiが集中砲火を浴びている分だけ、真に中国政府と結託している企業や中国政府の諜報部局には目が向けられないから諜報活動がやりたい放題になるので、習近平政権は「ルンルン」だろう。
但し、世界170ヵ国にあるHuaweiの支社同士が互いに競争しているため、「産業スパイ」をしているか否かに関しては別問題である。
クァルコムと協力関係にあるセンスタイム
さらに奇妙な現象がある。
BATISのうち、(1)~(4)の「BATI」までの企業は2017年11月に指名されているが、最後の(5)の「S」、すなわち「Sense Time(センスタイム)」(商湯科技)だけは、2018年9月になって、ようやく決まった。担当するのは「顔認識」。