最新記事

中国

中国のAI巨大戦略と米中対立――中国政府指名5大企業の怪

2019年2月12日(火)15時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

これらの理由を裏付ける事実に関しては多くのコラムを書いてきた。たとえば、2018年12月30日付のコラム<Huawei総裁はなぜ100人リストから排除されたのか?>や2019年1月19日付けの<Huaweiの任正非とアリババの馬雲の運命:中共一党支配下で生き残る術は?>などで述べた。

このたびBATISに選ばれなかったという「客観的事実」は、また一つ、「Huaweiが中国政府と結託していない」証拠として挙げられるのではないだろうか。

アメリカがHuaweiを叩き潰したいのは、まさに1980年代、日米半導体協定によって、世界一だった日本の半導体を沈没させてしまったのと同じ理由だ。2018年12月24日付けコラム<日本の半導体はなぜ沈んでしまったのか?>に書いたように、アメリカは同盟国の日本に対してさえ「アメリカの国家安全を脅かす」として、日本の半導体を叩き潰してしまった。だからHuawei叩きの目的が半導体潰しであることは明白だ。

もし、本当にHuaweiが「情報を抜き取って中国政府に渡している」ということを疑うが故にHuawei叩きをしているのであれば、先ずその証拠を出さなければならないだけでなく、なぜ諜報活動(スパイ行為)を専門とする部局である「中国人民解放軍戦略支援部隊サイバー空間情報分隊」や「国家安全部」を狙い撃ちしないのか。Huaweiに注目させている間に、中国はスパイ活動をやりたい放題実行しているにちがいない。

BATISに選ばれないほど、Huaweiは中国政府とは疎遠で、癒着などしていないことになろう。Huaweiが集中砲火を浴びている分だけ、真に中国政府と結託している企業や中国政府の諜報部局には目が向けられないから諜報活動がやりたい放題になるので、習近平政権は「ルンルン」だろう。

但し、世界170ヵ国にあるHuaweiの支社同士が互いに競争しているため、「産業スパイ」をしているか否かに関しては別問題である。

クァルコムと協力関係にあるセンスタイム

さらに奇妙な現象がある。

BATISのうち、(1)~(4)の「BATI」までの企業は2017年11月に指名されているが、最後の(5)の「S」、すなわち「Sense Time(センスタイム)」(商湯科技)だけは、2018年9月になって、ようやく決まった。担当するのは「顔認識」。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー

ワールド

ローマ教皇の容体悪化、バチカン「危機的」と発表

ワールド

アングル:カナダ総選挙が接戦の構図に一変、トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中