最新記事

人権問題

共産党の網をかいくぐりウイグル支持の輪は広がる

2019年2月22日(金)15時00分
水谷尚子(中国現代史研究者)

中国共産党はウイグル民族音楽家の生存映像でトルコに反論 CRIーREUTERS TVーREUTERS

<トルコ政府の強制収容批判に中国がプロパガンダで反撃するが>

中国・新疆ウイグル自治区で幅広い年齢層のウイグル人に愛されてきた民謡歌手でウイグル民族楽器奏者のアブドゥレヒム・ヘイットが思想改造目的の強制収容所で死亡した、との情報が2月初旬に複数のトルコメディアで報じられた。

ウイグル人への人権蹂躙をめぐるトルコ社会の抗議の声は高まり、トルコ外務省の広報官が中国政府への抗議声明を発表するに至った。ところが、中国政府は間髪入れずアブドゥレヒム自身が「私は生きている」と語る映像を発表した。

3月末に統一地方選を控えたトルコのエルドアン大統領は、テュルク系民族世界の長として人権侵害について発言しなくてはならなかったのだろう。このところ中国政府は、在外ウイグル人を中心とした国外の強制収容反対運動にプロパガンダで反攻を仕掛けている。だがそれをかいくぐるようにウイグル人、そして漢人から実態のリークが相次ぐ。

今年1月、中国政府は外国メディアの特派員たちにウイグル人らイスラム教徒を拘束する強制収容施設を見学させた。「職業訓練施設だ」という政府の弁明を証明するためだが、現地からは国外のウイグル人組織に命懸けの内部告発が相次いだ。

アメリカの短波ラジオ放送「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」が昨年12月に入手した情報によると、アクス地区アワット県にあった第1、第2、第3再教育センターと呼ばれる3カ所の強制収容所は、訪問団見学のために外装の一大改装を実施。第2の収容者5700人の半分を第1と第3センターに移動させ、第2センターの壁にあった有刺鉄線や収容者の部屋にある監視カメラ、ドアや窓に取り付けてあった鉄板を撤去した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

グリーンランドに「フリーダムシティ」構想、米ハイテ

ワールド

焦点:「化粧品と性玩具」の小包が連続爆発、欧州襲う

ワールド

米とウクライナ、鉱物資源アクセス巡り協議 打開困難

ビジネス

米国株式市場=反発、ダウ619ドル高 波乱続くとの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    凍える夜、ひとりで女性の家に現れた犬...見えた「助けを求める目」とその結末
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    米ステルス戦闘機とロシア軍用機2機が「超近接飛行」…
  • 7
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 8
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 9
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 10
    関税ショックは株だけじゃない、米国債の信用崩壊も…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    凍える夜、ひとりで女性の家に現れた犬...見えた「助…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 9
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 10
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中