共産党の網をかいくぐりウイグル支持の輪は広がる
漢人からの収容所情報
米NASAで研究者として活躍しているウイグル人物理学者エリキン・スデックは、ウルムチから入手した情報として1月12日に以下の内容を公表した。
「先週、12カ国の外交官らがウルムチを訪問した際に、当局は一部の住民に対して、次の日からモスクへ行って以前のように礼拝するよう命じた。『中国共産党の指示で礼拝をやめたのに』と断った住民らに対して、警察は『党の今の命令は礼拝をすることだ』と命じた。翌日、命令どおりにモスクへ行くと、監視カメラが全て撤去され、モスク内にはクルアーン(コーラン)が置いてあった。外国訪問団は、2日間の滞在中にモスクを訪問した。3日目に住民らがモスクへ行くと、そのモスクは閉鎖されていた。住民らは警察に、党の命令で礼拝に来たと伝えると、『任務は完了した、二度と来るな』と追い返された」
体制批判をするのはウイグル人だけではない。1月15日、台湾最大のネット掲示板に、イリ地方の中心都市グルジャに勤務する漢人警察官の妻と称する人物が、収容施設の詳しい状況を投稿。新疆情勢を嘆く内容が反響を呼んだ。漢人の中にも同情する者が増えており、ウイグル人の安否情報をこっそり流すのは新疆在住の漢人だったりする。
アブドゥレヒムの映像公開は、まるでテロ組織ISIS(自称イスラム国)が人質生存ビデオを流すのと同じ行いとして世界中のウイグル人に捉えられた。彼らは「であれば、私たちの肉親の生存証明を出せ」とネット上で憤りを表明した。
中国政府はプロパガンダの一環として、中国服姿のウイグル人の子供の写真まで公開している。それでも深刻な人権侵害への包囲網は、中国政府の想像を超えて広がりつつある。
<本誌2019年02月26日号掲載>
※2019年2月26日号(2月19日発売)は「沖縄ラプソディ/Okinawan Rhapsody」特集。基地をめぐる県民投票を前に、この島に生きる人たちの息遣いとささやきに耳をすませる――。ノンフィクションライターの石戸諭氏が15ページの長編ルポを寄稿。沖縄で聴こえてきたのは、自由で多層な狂詩曲だった。
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