最新記事

アメリカ

ISIS・アルカイダの問題「むしろ悪化」 テロ首謀者殺害に喜べない理由

Dangerous Liaisons

2019年1月28日(月)11時25分
ジェフ・スタイン

パキスタンはアルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンを長くかくまった上、アメリカが支えるアフガン政府と戦うタリバンなど反政府勢力の支援を続け、スパイの敵味方を分かりにくくしている。昨年10月には米軍およびNATO軍のオースティン・ミラー司令官が、タリバンに銃撃されている。

イラクでは、シーア派民兵組織がイランの後押しを受けている。トルコは、米軍の支援の下にテロ組織ISIS(自称イスラム国)と戦うクルド人の掃討作戦を発表した。ヨルダンではトランプ政権が取る親イスラエル政策をめぐり、不満が広がっている。

ヨルダンの諜報機関がアルカイダに潜入させるために雇った人物が、アフガニスタンのCIA基地で自爆攻撃を行ったのは、もう9年前のことだ。実はアルカイダの二重スパイだったのだ。

米軍がビンラディンを捕らえようと、アフガニスタンに侵攻してから17年以上。イラクの独裁者だったサダム・フセインと(存在しない)大量破壊兵器を排除しようと、イラクに侵攻してから約16年。これらの地域は今、米軍にとってかつてないほど危険な場所になった。

バラク・オバマ前米大統領は前任者たちと同じく、「パートナーシップを大切にして、米軍が役割を果たさずに済むよう同盟国軍を訓練し、武器供与をして最前線を守らせた」と、オバマ政権下で国家安全保障会議の報道官を務めたエドワード・プライスは言う。

だが米政府にとっての戦略的問題は、エジプトなど諜報活動に重要な同盟国の多くが、国民への弾圧や蛮行、腐敗で悪名高いことだった(現在も同じだ)。

反体制派や人権活動家、ジャーナリストが送り込まれる刑務所は、ジハード(聖戦)に関わる者にとって学びの場になった。カイロ近郊のトラ刑務所に入れられたアイマン・アル・ザワヒリはその後、アルカイダの指導者になっている(現在もパキスタンで存命中とされる)。

サウジアラビアやイエメン(アリ・アブドラ・サレハ前大統領が2017年に暗殺された)は以前から、アメリカと表面上のパートナーシップを結ぶ方法として、イスラム過激派を裏で支援しながら彼らを逮捕してきた。バダウィを拘束していたのは「イエメンにとってイデオロギーの問題ではなかった」と、米国務省のベンジャミンは言う。「サレハが私たちをだましたかっただけだ」

新しい友人もできない

イギリスの諜報機関MI6で国際対テロ作戦の責任者だったリチャード・バレットは「信頼できる同盟国は強い味方だ」と本誌に語った。「ただし、予測不能でこちらを操ろうとする同盟国は、敵よりも始末が悪い」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中