ISIS・アルカイダの問題「むしろ悪化」 テロ首謀者殺害に喜べない理由
Dangerous Liaisons
パキスタンはアルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンを長くかくまった上、アメリカが支えるアフガン政府と戦うタリバンなど反政府勢力の支援を続け、スパイの敵味方を分かりにくくしている。昨年10月には米軍およびNATO軍のオースティン・ミラー司令官が、タリバンに銃撃されている。
イラクでは、シーア派民兵組織がイランの後押しを受けている。トルコは、米軍の支援の下にテロ組織ISIS(自称イスラム国)と戦うクルド人の掃討作戦を発表した。ヨルダンではトランプ政権が取る親イスラエル政策をめぐり、不満が広がっている。
ヨルダンの諜報機関がアルカイダに潜入させるために雇った人物が、アフガニスタンのCIA基地で自爆攻撃を行ったのは、もう9年前のことだ。実はアルカイダの二重スパイだったのだ。
米軍がビンラディンを捕らえようと、アフガニスタンに侵攻してから17年以上。イラクの独裁者だったサダム・フセインと(存在しない)大量破壊兵器を排除しようと、イラクに侵攻してから約16年。これらの地域は今、米軍にとってかつてないほど危険な場所になった。
バラク・オバマ前米大統領は前任者たちと同じく、「パートナーシップを大切にして、米軍が役割を果たさずに済むよう同盟国軍を訓練し、武器供与をして最前線を守らせた」と、オバマ政権下で国家安全保障会議の報道官を務めたエドワード・プライスは言う。
だが米政府にとっての戦略的問題は、エジプトなど諜報活動に重要な同盟国の多くが、国民への弾圧や蛮行、腐敗で悪名高いことだった(現在も同じだ)。
反体制派や人権活動家、ジャーナリストが送り込まれる刑務所は、ジハード(聖戦)に関わる者にとって学びの場になった。カイロ近郊のトラ刑務所に入れられたアイマン・アル・ザワヒリはその後、アルカイダの指導者になっている(現在もパキスタンで存命中とされる)。
サウジアラビアやイエメン(アリ・アブドラ・サレハ前大統領が2017年に暗殺された)は以前から、アメリカと表面上のパートナーシップを結ぶ方法として、イスラム過激派を裏で支援しながら彼らを逮捕してきた。バダウィを拘束していたのは「イエメンにとってイデオロギーの問題ではなかった」と、米国務省のベンジャミンは言う。「サレハが私たちをだましたかっただけだ」
新しい友人もできない
イギリスの諜報機関MI6で国際対テロ作戦の責任者だったリチャード・バレットは「信頼できる同盟国は強い味方だ」と本誌に語った。「ただし、予測不能でこちらを操ろうとする同盟国は、敵よりも始末が悪い」