「EKIBEN」は美食の国フランスで通用したか? 浄水器持ち込み「本物」のふっくらごはん再現
駅弁業者の調理担当者がパリ市内の厨房で製造し「日本の味」をPRした今回の販売。だが、普段は日本国内のみで製造販売している駅弁業者に誘いをかけ、パリへの出店を促すのはやはりさまざまな困難があったようだ。
紆余曲折の末「パリへの出店」という非常に高いハードルを越えて参加したのは、日本ばし大増(東京都荒川区)、大船軒(神奈川県鎌倉市)、花善(秋田県大館市)、斎藤松月堂(岩手県一関市)、淡路屋(神戸市)の5社だ。
商品は朝から夕方まで供給しなければならないため、自社の商品だけを作り続けるわけにはいかない。各社の担当者は他社の駅弁調理にも携わることとなった。NREの喜嶋治朗・国際業務課担当部長は「各社さんのオリジナリティーある駅弁を出すことができたのは、シェフの皆さんの共同作業のおかげ」と話す。会期中に売れた数は1日平均にすると250個あまり。週末には売り切れも予想されたので、生産を増やした日もあった。
一方で、日本ではありえないアクシデントにも見舞われた。売り場が置かれた駅のコンコースに長時間にわたって乗客が入ってこない日があったのだ。「信号故障でショップがあったコンコースに列車が入れない」「ストで列車が運休」、そしてマクロン政権による燃料税引き上げに反対する人々による「デモでパリ全体の交通がマヒ」――。いずれも想定外のトラブルだったに違いない。
海外展開の可能性は?
今回のリヨン駅でのポップアップショップは期間限定で、イベントの一環として実施されたものだが、NREや今回のパリ出店に参加した業者は、駅弁の海外展開の可能性もにらんでいる。海外での「日本紹介イベント」は実験的な打ち上げ花火で終わってしまうことも多いが、今回の出店についてNREは「市場調査的な意味合いも強い」とその意義を強調する。
フランスでは列車に乗るのに早めに駅に到着する人が多いといい、それもあってパリでの販売ではスピードや効率よりも顧客との会話を重要視したという。「心のこもった温かさで日本らしさを表現」するとともに、店員が購入客に「どこでこれを食べるのか?」と尋ねることもできるため、意見の収集になるためだ。
販売時に行ったアンケートによると、買った駅弁を食べる場所は大半が「TGVの中」。一方で、家や会社で食べるという需要も4割程度あったという。