北朝鮮への対応巡り韓国・文政権内に亀裂? 非核化交渉の妨げに
募るいら立ち
韓国大統領府の考え方をよく知る第3の情報提供者によれば、趙統一担当相があまりにも米国の思惑を気にすることへの懸念から、大統領府、あるいは統一省内部でさえ、趙氏へのいら立ちが強まっているという。
「統一担当相としての趙氏に大統領が期待しているのは、大統領が重視するイニシアチブが実現するような大胆なアイデアを思いつくことだ」とこの情報提供者は言う。
この夏に3回行われた南北首脳会談の中で、文大統領と金正恩氏は、両国をつなぐ鉄道・道路の再開、条件が整った時点での開城工業団地の操業再開、長年中断している北朝鮮のリゾート地、金剛山へのツアー再開に合意した。
これらの計画はいずれも大きな進捗(しんちょく)を見せていない。制裁によって直接的に禁止されているか、開城工業団地の場合のように、こうした南北合同プロジェクトが制裁の効果を損なうことを危ぶむ米当局者を韓国政府が説得するのに時間がかかっているためだ。
また北朝鮮自体も、行動が読みにくいパートナーだ。統一省の当局者によれば、開城の連絡事務所を通じた協議もたまにしか行われていない。北朝鮮政府側の交渉担当者が毎週予定されている協議に無断欠席することが多いからだ。
それでも、開城での連絡事務所開設は米国政府との対立を招いた。
韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は8月、議会答弁の中で、米当局者が韓国政府に対し、開城の連絡事務所に関する韓国側の説明は「十分ではない」と伝えてきたと述べた。
ソウルにいるある外交関係者によれば、現在は閉鎖されている開城工業団地でかつて工場を経営していた企業関係者グループが連絡事務所の開所式に招待されたことは、米国政府にとって予想外だったという。
韓米両国は先月、対北朝鮮政策を調整するため、核交渉の代表団を中心としたワーキンググループを立ち上げた。上記の外交関係者によれば、このグループ立ち上げは「南北朝鮮の関係をけん制したい」という米国の要望から生まれたという。
開城の連絡事務所に関する質問に対して、米国務省のある当局者は「すべての加盟国が、国連安保理決議に基づく部門ごとの禁止物品を含め、国連による制裁を完全に実施することを期待している。また、(北朝鮮による)違法な核兵器・ミサイル開発プログラムを終結させるべく、すべての国が真剣に責任を果たすことを期待している」と述べている。
また、別の国務省当局者によれば、米国は、トランプ・金両氏による首脳会談において、4月の南北首脳会談での合意に対して承認を表明したという。「南北関係の進展は、非核化の進捗と足並みをそろえて行われなければならない」というのがその理由だ。
ポンペオ米国務長官は先月、ワシントンで趙統一担当相に会い、南北間の協力と核交渉の進捗は「引き続き足並みをそろえるべきである」とはっきりと警告した。